いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「人形遣い」賽目和七(ガガガ文庫)

人形遣い (ガガガ文庫)
人形遣い (ガガガ文庫)

わたしの名前は坂上神楽。凄く可愛くて頭が良く、芸達者で器用で立ち振る舞いも完璧。ダイヤモンドもはだしで逃げ出すとまで謳われる世界的天才美少女であり、討魔である。討魔とは、狼男のような人ならざる化け物を人知れず影で退治するという、実にありがたい御仏が如き仕事に従事する人間なのだ! ――人形を繰る一族の少女・神楽は兎のぬいぐるみを操り、その天才性から無比の戦闘方法を魅せる。そんな彼女があるヴァンパイアと出会い……。
第7回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作!


百合だという噂を聞きつけて買ってきたら、上質のツンデレが出てきた。


あらすじと冒頭からは最強で高飛車な女主人公・神楽が暴れまわる作品なのかと思いきや、この子が予想外にか弱い子で。傲慢な態度は虚勢を張ることで自分を守る鎧。そればかりか幼少期愛されなかった過去から、人との距離感が分からず、自分の生き方も分からないという、知れば知るほどハラハラするような子・神楽。
それがひょんなことから出会った吸血鬼・鈴音との交流で、その鎧が少しずつ剥がれていく様がこの作品最大の読みどころ。そこにツンデレらしい言動と、女の子二人がきゃっきゃうふふ(死語)しているので、ニヤニヤポイント多し。
また、ウサギの人形が戦うという絵的にはファンシーなアクションシーンも意外と本格的。
魔術に対する説明が丁寧過ぎてテンポが悪いという一面もあるが、神楽の抱える弱点が戦闘を才能でごり押しではなく、弱いものが強いものを倒す戦術面を重視したものになっているので読み応えがある。それに、その弱点が鈴音との関係を一段上げる要素にもなっているのが上手いところ。
最近は正統派なツンデレ、ちゃんとツンからデレに移行する様を味わえるものは少ないように思う。それが百合で楽しめる個人的に大好物な作品だった。