いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ゼロから始める魔法の書」虎走かける(電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)
ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

教会歴526年――。世界には魔女がいて『魔術』が普及していた。そして、世界はまだ『魔法』を知らなかった。
そんな時代、人々に”獣堕ち”と蔑まれる半獣半人の傭兵がいた。日々、人間になることを夢見る彼だったが、その数奇な運命を一人の魔女が一変させる。
「――戻りたいのか? 人間に。だったら傭兵、我輩の護衛になってくれ」        
ゼロと名乗る魔女は、使い方しだいで世界を滅ぼしかねない魔法書【ゼロの書】を何者かに盗まれ、それを探す旅の途中だという。傭兵は、人間にしてもらうことを条件に、大っ嫌いな魔女の護衛役を引き受けるのが、禁断の魔法書をめぐって人々の思惑が絡み合い……。

第20回電撃小説大賞<大賞>受賞作。



美女(魔女)と野獣(獣人)のファンタジー
完成度が高く読みやすく……特徴も少ない。どこを取ってもあと一押しが足りない印象。
パブリックイメージの魔法をそのまま使うことを良しとせず、物語が魔法の成り立ちから始まるのは特徴と言えなくもないが、その作品独自の魔法の概念を根本から作ってしまっている作品もあるので、それらに比べると押しは弱い。
また、その魔法が実に地味。戦闘が地味なのは自分は好みだが、万人受けはしないだろう。
それにキャラクターも薄め。中身が誰もがいい人過ぎてイマイチキャラが立っていない。姿形には特徴はあるが、挿絵があると言っても小説だからなあ。一番目立っているのが服屋の変態親父ってのはダメでしょ。
あとは、戦争や魔女狩りで人の醜い部分を躊躇なく書いているあたりには好感が持てるのだけど、最後が綺麗に収まりすぎていて説得力がなくなっている。
完成度で大賞が選ばれることが多い電撃小説大賞の大賞作品らしい作品だった。飽和状態にあるラノベ業界で、何か一つでもパンチの効いたところがないと、ヒットは厳しいかと。