いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アオイハルノスベテ」庵田定夏(ファミ通文庫)

アオイハルノスベテ (ファミ通文庫)
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輪月高校に入学した生徒だけが発症する不思議な力――《シンドローム》。その力で横須賀浩人は、3年間の時間を強制的に巻き戻されてしまった。どうしてこんな状況になったのか、誰の力が原因なのかも分からず、残っていたのはかすかな記憶だけ。そんな中で浩人が掲げた目標は――白紙になった3年間を、最高の高校生活としてやり直すこと!? 交流のない幼なじみやマニアックな男友達、さらに近寄りがたい美少女との接触からすべてが始まるオールデイズ青春グラフィティ!


ココロコネクト』の庵田氏の新作は、入学した生徒に異能が発現する『輪月症候群』(但し、知覚できるのも生徒のみ)が発症する不思議な高校、輪月高校を舞台にした物語。読み始めてすぐに「ふうせんかずらの新しい実験場か?」と思ったのは自分だけじゃないはず。


一発目から逃げたり、悩んだり、叫んだり。相変わらず青臭さ。特殊な環境下で若者らしい葛藤が濃縮されているようで、読んでいるこっちが赤面してしまいそう。
そんなわけで、全力で青春してる前作と非常に似た雰囲気を持つ作品だが、前作よりもストーリー重視な印象。
特に主人公・横須賀の葛藤が丁寧に描かれている。背負うものが重く、まだ心から信頼できる仲間もいない。動き出すのにかなりのエネルギーが要る状態なので、吹っ切れるまでの過程がなかなかに重苦しい。それ故に吹っ切れてからのパワーは羨ましさを感じるほど。まあ、それ以上に恥ずかしいんだけどw
ストーリーに重きを置いた分、今のところキャラクターは弱い。
主人公の浮き沈みが激しくてキャラが掴みきれないのと、メインヒロイン(多分)の葵が容姿以外個性が強くないのが原因か。幼馴染みの小心者なのにお調子者で愛嬌のある岩佐ちゃんとプロレス大好き女子木崎さんの方が目立ってる。個人的には岩佐ちゃん押し。
まだ仲間らしい仲間が揃ったところなので、今後の彼らの交流に期待。横須賀が本気で心を開ける日が来るのか、決められた結末は回避できるのか、色々と興味は尽きない。