いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ヒーローズ(株)!!!」北川恵海(メディアワークス文庫)

ヒーローズ(株)!!! (メディアワークス文庫)
ヒーローズ(株)!!! (メディアワークス文庫)

「なーんの面白味もない人生やったなあ」――病床にある祖父の言葉が頭から離れないコンビニ店員の修司・26歳は、ある日、借りのある同僚から『ヒーローはキミだ!』という胡散臭い求人広告のアルバイトを持ちかけられた。その会社にいたのは、ちょっと癖のある人たち。いきなり任された仕事は、今をときめく人気漫画家の“お守り”? わけがわからないながらも真面目に仕事をこなす修司は、次第に信頼を得るように。しかし、そんな修司の前に過去のトラウマが立ち塞がる――。

なんて説明が難しい小説なんだ(^^;
とある理由でフリーターをしていた青年が、ヒーローになる手助けをするという訳が分からない業務内容の会社に就職する物語。最後まで読んでもサービス内容は半分も掴めない。
でも書かれていることは明確。
それは他人の人生に関わること。人間誰しも生きていれば誰かに影響を受け、誰かに影響を与えて生きているものだけど、それを分かりやすく単純に表したのがこの作品。
主人公が出会う会社の先輩たちや顧客との交流の中に、読者が自分の言動を省みるきっかけになりそうなシーンがいくつもある。それに会社の先輩たちから、客である漫画家から、入院中のじいちゃんから、悩む主人公に掛けられる言葉には、グッと来たりおおっと思わせられる名言が次々に出てくる。
誰が読んでも心を軽くしてくれたり、元気にしてくれるところが見つかりそう。「誰でも共感できて、読んだ後はきっと元気になれます」という帯に偽りなしだった。
ストーリーだけ見たら「なんじゃこりゃ」な内容なのだけど、メッセージははっきり伝わってくる。書きたいことや伝えたい言葉の為に、フィクションでしかできない世界や状況を作り出す。これも一つの小説の形だろう。