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「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編」武田 綾乃(宝島社文庫)

響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫)
響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫)

一年生部員たちもようやく部活に慣れ、コンクールに向けた練習もいよいよ本格的になってきた北宇治高校吹奏楽部。しかし麗奈は、オーボエのみぞれのソロの出来に不満を感じていた。二人で音大を目指すというみぞれと希美だったが、その関係が演奏に影響を及ぼしているのだろうか。また、一年生の小日向夢は、実力者でありながらソロを吹くことを嫌がり……。アニメも大人気の吹部エンタメ、新章完結編。

天才覚醒。
少年誌なら100%勝ち確フラグなのに、そうは問屋が卸さないところにこのシリーズの吹奏楽への本気度が感じられる。……のはいいところなのだけど、大会の形式上、読み進めると共に心もとなくなっていく左手の感触が如実に結果を現しているのが物悲しい。
そんなわけで二年生編後編。
しかし視点の久美子が二年生なだけで実質は三年生編。そう感じるほど、みぞれと希美を中心に回っていた。三年生と一年生のそれぞれに起こる問題に板挟みにあう中間管理職な久美子の図を想像していたのだが、ここまで三年生メインで一年生は蚊帳の外なのは予想外。そして、みぞれと希美の関係性も予想外。
依存の状態からすでに巣立ちの準備が出来ていたみぞれと、リーダー気質ゆえに抱えてしまうどす黒い感情に苦しむ希美。次々と醜さを曝け出していく希美に、ハラハラさせられたり共感したり。実にこのシリーズらしい、未成熟な高校生の生々しい青春模様だった。
また、ここまで人間臭さを出して生きたキャラクターになった希美が好きに……なりかけたけどなれなかった。みぞれが勇気を出してあそこまで言っても、プライドと中途半端な優しさが邪魔して中途半端な答えで返すのは潔くないし、格好悪い。最後は吹っ切れるキャラが多い中で珍しいパターンではあったけれど。
その一方で吹っ切れたのが一年生のトランペット・夢。彼女の変化の最大の功労者、加部ちゃん先輩の演説が今回最高の涙腺刺激シーン。
で、この夢の話が終盤に持ってきてあったことでなんとなく想像はできていたけど、ラストは完全に三年生編へ続くの流れに。青春はともかく吹奏楽の方が不完全燃焼で終わってしまったので、最後の一年に託したいが、久美子は大丈夫だろうか? いや想いだけでも努力だけでもダメだと痛感させられた久美子たち新三年生ならきっと……。
求君の因縁を絡めて龍聖が最大のライバルになりそう。なんて予想しているとまた裏切られそうなので、何も考えずにゆっくり待とう。