いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い (富士見ファンタジア文庫)

イヴは夜明けに微笑んで細音啓富士見ファンタジア文庫
オンライン書店ビーケーワン:イヴは夜明けに微笑んで

彼女は、ずっと考えていた。人と関わらず、孤独な人生。それで、いいのかと。
だから、決めたのだ。自分の“心”を形にして詠び出せる、名詠式を学ぶことを。そうすれば、少しでも彼に……何かを伝えられるかもしれないから――。
『Keinez』(赤)・『Ruguz』(青)・『Surisuz』(黄)・『Beorc』(緑)・『Arzus』(白)――この五色を基本に、呼びたいものと同じ色の触媒(カタリスト)を介し、名前を讃美し、詠うことで招き寄せる名詠式。その専修学校に通うクルーエルは、年下の転校生で、異端の夜色名詠を学ぶネイトに興味を抱く。一方、学校を訪れた虹色名詠士・カインツもまた、夜色名詠の使い手を探していて……!?

ファンタジア長編小説大賞佳作。名詠式という召還術を教える学校が舞台の学園ファンタジー


いいね。粗はあるけど作品の雰囲気がすごくいい。
キャラたちそれぞれの優しさと竹岡絵が相まって、切ないけど温かい物語。異端の夜色名詠が話の主題だけどメインはクルーエル(この子は赤)。ネイトと出会い、事件に巻き込まれることで成長していくクルーエルが内面まで丁寧に描かれている。また器用貧乏でちょっと姉御肌のクルーエルの性格も魅力的。他のキャラたちも他人を思いやる人物が多くて、それがこの作品の温かな雰囲気にしている。お気に入りはちょっとツンの入ったイブマリーかな。やっぱりキャラのいい小説は面白い。
難点は伏線がストレートすぎて先が読みやすく、あっと驚くような展開がないことと、ヒドラが暴れている時の状況が把握しづらいことかな。テンポのいいアクションを魅せる作風ではないので、もう少し状況説明があっても良かったと思う。
シリーズタイトルが付いてるし、続きがあるのかな? ひとつの大きな事柄は解決したので、この後どう展開させるかが見物だ。