いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)野村美月ファミ通文庫
“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫 の 2-6-4)

文芸部部長、天野遠子。物語を食べちゃうくらいに愛するこの“文学少女”が、何と突然の休部宣言!? その理由に呆れ返りつつも一抹の寂しさを覚える心葉。一方では、音楽教師の毬谷の手伝いで、ななせと一緒に放課後を過ごすことになったりと、平和な日々が過ぎていくが……。クリスマス間近の街からひとりの少女が姿を消した。必死で行方を追うななせと心葉の前に、やがて心葉自身の鏡写しのような、ひとりの“天使”が姿を現す──。

過去の名作になぞらえて愛憎劇が起こるシリーズの第4弾。今回の題材は「オペラ座の怪人


ななせかわいいよななせ


今回も最高でした。
琴吹ななせの親友水戸夕歌を中心に、凡人の苦悩と天才の苦悩がすれ違い嫉妬と愛情が起こす悲劇。そんなひどく哀しく愛憎劇の中、ななせの真っ直ぐな想いが物語を、そして心葉を救う。そんな切なくも美しい物語。相変わらず物語に引き込む力と哀しくしすぎないバランス感覚が素晴らしい。


今回はなんと言ってもななせに尽きる。
レギュラーメンバーもゲストキャラも心に大きな影がある登場人物が多い中、ななせは日常とか平和の象徴みたいなキャラだったので、そのななせを中心に置くことでななせにも暗い影を落としてしまわないかハラハラしたけど、逆に大切な人への真っ直ぐな想いと芯の強さを見せてくれた結果に一安心と共にななせというキャラが前より好きになった(元々ななせ派だけど)
また、いつもは事件によって落とされた影に遠子の天然キャラで光を当ててバランスを取っていた感じだったので、序盤は遠子の不在で陰鬱にな話になってしまわないか不安だったけど、それもななせの可愛らしさで見事にカバー。特にとある少女の日記の中のななせの素直で一途な姿はそれだけで頬が緩む。それに遠子はいつも“読者”だから外から光を当ててたけど、今回のななせは“出演者”なので内側から光を当てた感じで、心葉の救われ方がいつもと違っていたのが印象的だった。遠子は包み込むような優しさで心葉を救うのに対し、ななせは心葉に足りない心の強さを見せることで励ましているような感じだった。
とにかく予想通りの素直で一途な可愛らしい姿と予想外の強さを見せてくれた、ななせの魅力がたっぷりで大満足な一冊。


次は彼女か。心葉はどれだけ苦しめられるんだろう・・・楽しみなような、怖いような