いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



翡翠の封印 (C・NOVELSファンタジア)

翡翠の封印」夏目翠(C★NOVELSファンタジア)
翡翠の封印 (C・NovelsFantasia な 1-1)

神殿で巫女姫として一生を終えるはずだったセシアラは同盟の証として北方の新興国に嫁がされた。緑の瞳と人には言えない能力を持つ少女は、悲壮な決意でヴェルマに赴く。そこで待っていたのは奔放に生きる少年王。少女はこの日、運命に巡りあった――
第4回C★NOVELS大賞受賞作

舞台は剣も魔法もあるオーソドックスなタイプのファンタジーだが、メインは戦いよりも人の心。


主役であるセラの心理描写が素晴らしい。
生い立ちとある力によって凍っていた心が侍女ミリィに触れ、城の人々と触れ、そして少年王テオに触れ、少しずつ溶けていき感情が豊かになっていくセラの様子が丁寧に描かれている。エピローグでのセラの物語初めからは考えられない少女らしい姿には微笑ましいのと同時に胸を打つものがある。
ただ物語のクライマックスである第九章と第十章がちょっと・・・。
同じような事を繰り返している問答や、戦闘中に自分の能力を長々と語ってしまうナーガともっとずるく立ち回れるのにやろうとしないバシュドゥに激しい違和感を覚える。第八章の戦争シーンもさらっと流してたし、人が争うシーンは苦手なんだろうか?
完成度はあまり高くないようには感じるが、読みやすいし、ファンタジーでも戦いよりも人を描いてくれているので個人的には好みの作品。