いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



Hurtless/hurtful (MF文庫 J し 2-7)

「HURTLESS/HURTFUL ハートレス/ハートフル」清水マリコMF文庫J
HURTLESS/HURTFUL (MF文庫 J し 2-7)

「――脱獄してきたよ。心の中から。行くところがないから、逃亡先を見つけて?」人助けをして線路に落ち、一躍お茶の間のヒーローになってしまった兄をもつ待中玲夫、16歳高校生。以来、一家はマスコミに追われ、玲夫は有名人としてクラスメイトに遠巻きにされてしまう。そんな、まるで非現実みたいな現実に叩き落とされた玲夫の前に突然現れたのは、「脱獄してきた」と笑う、砂糖菓子みたいな少女だった。
あたりまえの今日がずっと続くと思っていた玲夫と、帰るところを失った少女が手を取りあって、東京の夜を駆ける。清水マリコ渾身のエスケープ・ストーリー。

簡単にあらすじを書くと、
らしくない人助けで意識不明になってしまった玲夫の兄ゆずる。突然現れた少女の言葉を発端に、玲夫は少女と幼馴染みの容さんと共にその理由を探り始めるが・・・
という内容で、さらに端的に表すと
お帰りなさいませ!清水マリコ先生!という内容。


良かった。ただひたすら良かった。
存在は謎だが明るく元気な脱子と存在に現実味はあるがどこか陰のある容さん。ミステリアスな少女二人と寂れた下町の情景が醸し出す雰囲気が、もう最高。
また、少女二人と玲夫の刻々と変わる距離感が青春小説らしくてなんだかこそばゆい。
そして兄の過去を追って辿り着くラストは、たっぷり切なさと少しの苦さとほんのちょっとの甘さが合わさった、何ともいえない読後感。
マスコミの反応の過剰さとかクラスメイトの反応とか、現実に照らし合わせると違和感を感じるところはあるが、そんな細かいことは気にならないほど雰囲気を堪能できた。
作者のMF文庫Jでの前作 嘘シリーズが好きな人には是非とも読んでもらいたい一冊。