いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「地球保護区」小林めぐみ(ハヤカワ文庫JA)

地球保護区 (ハヤカワ文庫JA)
地球保護区 (ハヤカワ文庫 JA コ 4-2)

環境汚染で人類が地球から退去して数百年。各植民惑星で増加し地球系連合を組織した人類は、もはや全員の地球回帰が不可能になっていた。だが、独自に回帰し回復途上の自然を再開発する人々が増え、問題化している。連合の地球保護委員会に環境調査を任された賢女コーリン、彼女に同行しつつも密かに別命を受ける青年シウ、そして彼らの命を狙う少女ニナ――この星を愛するが故の様々な想いが、未曾有の危機を招来する!


これはいいSFボーイミーツガール。シウはボーイという年齢じゃないとの、二人より目立つ婆さん付きではあるけども。
物語の核は、地球を回復させたい地球保護委員会と新しい自分達の生活を守りたい新地球人の対立で、人間という種に対する表現は非常にシビア。回復しつつある地球を巡っての人間達の争いや、それぞれのエゴを押し付けあう姿は醜いという他無い。
でも、話の中心はあくまで人。過酷な現実の中でのシウとニナの成長の物語。
クローン技術で落ちこぼれとして生まれたシウと、早くに両親を亡くしゲリラとして生きてきたニナ。劣等感を抱きながら生きてきた二人が、時に傷つけあい時に助け合いながら前に進んでいこうとする姿は、青春ものの王道。ニナが美しいツンデレを発揮するところも見所w
また、そんな二人を導く?コーリンが味あるいいキャラ。基本はイジワル婆さんみたいなキャラで、彼女を中心とした掛け合いが面白い。彼女のおかげでどんな状況でも雰囲気が重くなりすぎることがなく、この作者らしいゆるい空気が出ている。それでいて、ここぞという時にシウやニナに投げかける一言の重みや力強さには感服した。
400頁超の確かな読み応えと、シビアだけど希望のあるラストで心地よい読後感。面白かった。