いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ガーデン・ロスト」紅玉いづき(メディアワークス文庫)

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)
ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

眠れない夜を生きる少女たちの失花園


誰にでも、失いたくない楽園がある。息苦しいほどに幸せな安住の地。しかしだからこそ、それを失う痛みは耐え難いほどに切ない。


誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。花園に生きる女子高生4人が過ごす青春のリアルな一瞬を、四季の移り変わりとともに鮮やかに切り取っていく。
壊れやすく繊細な少女たちが、楽園に見るものは――。

放送部に集う4人の少女一人一人視点で描かれる4つの物語。


叫びだしたくなりそうなほど痛々しい、あまりにもリアルな“嘘”の物語。
他人と自分を誤魔化すための嘘、自分を守るための嘘、口当たりのいい嘘、相手を傷つけそれ以上に自分を傷つけるだけの嘘・・・。悪いことと自覚した上でさまざまな嘘で身を固め、自らを傷つけていく彼女達の姿が痛々しい。
そのあまりにも不器用さに目が離せず、誰でもついたことのあるであろう嘘であるがゆえに4人それぞれにどこかしら共感できる部分がある。あってしまうのが恨めしい。
その中で一番引き込まれ共感してしまったのはシバ。ノイローゼ状態の彼女の嘘による心の自傷行為は読むのが辛くて、後半は涙が止まらなかった。4人の内ならエカが自分に近いなと感じたのに何故シバだったんだろう。
そんな切ないでも悲しいでもなくただただ痛々しい物語だったけど、最後だけは彼女達の成長を感じられて良かった。前向きかと問われれば首を傾げたくなる内容で、感じた痛さは消えることはないけど読後感は悪くない。