いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ストーリー・セラー」有川浩(新潮社)

ストーリー・セラー
ストーリー・セラー

世の中には、物語を「愛する人」と、物語に「愛された人」がいる。
すなわち、読む側と、書く側。残念ながら、どちら側の人間かを自分で決めることは出来ない。
「愛された人」から「愛する人」へ、心を込めて。


小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた――。
「Story Seller」に発表された〈Side:A〉に、単行本のために書き下ろされた〈Side:B〉を加えた完全版!


泣く気満々で読み始めたのに、Side:Aは怒りの方が勝って、Side:Bでは上手くはぐらかされて、どちらも泣けなった。
泣けるはずだったのに泣けないと、すっごいもやもやする。


Side:A
オープニングから死別が決定的で、これはラストは泣くなと思いながら読んでいたのだが、、、
運の悪い方の彼女がきつかった。
彼女の不幸として書かれた彼女の父という人間が、この家にいる約1名にあまりにも似ていたので腹が立って仕方がなかった。あんな奴のために読書が楽しめないと思うとまた腹が立って、後は負のスパイラル。
最後の「すき」の、痛々しいほどの愛しいという気持ちに浸っている気分にならなくなってしまった。
残念ながら自分には向かない話だったということか。
読書の時と感想書く時はリアルの感情をリセットしてるつもりだったんだけど。まだまだ修行が足りないな。


彼女が叱ってた担当はやっぱり幻○舎のOさんがモデルなのかな?



Side:B
何度か鼻の奥がツーンとしたり、喉の奥が痛くなったりするところまでは来たのに、いい所で上手くはぐらかされてしまった。物語を面白くする仕掛け「どこまでだと思います?」が、泣くという行為に関しては機能しすぎた。
でも、Side:Bは泣けはしなかったけど、仕掛けあり、恋の駆け引きあり、猫ありで非常に面白かった。
なんといっても彼が好き。
会社内での立ち居など生き方は計算高いのに、「読む側」になった時の素直さ、彼女(妻)に対する時の素直さが魅力的。彼の「愛する人」としての姿勢と表現の仕方には憧れるけど、自分があんな状況に追い込まれたらちょっと真似できそうにない。



良い意味でも悪い意味でも感情を揺さぶられる一冊だった。流石は有川作品。