いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶」多崎礼(C★NOVELSファンタジア)

夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

夢売りは請う。
「私は、夜明けを所望します」
夜の王は答えた。
「ならば、見せてもらおう」


夢売りが取り出したのは夢の結晶。その中心が淡い緑の光を放ち――
「これは結晶化した女の『夢のような人生』」


地方領主の娘として平凡に生きるはずだったアイナの物語。

太陽のない空と聖教会の恐怖政治によって民衆に暗く影を落とすサマーア神聖教国を舞台に、同じ時代を生きた人々の六つの物語。この1巻は翠輝晶―地方領主の娘アイナの半生と、蒼輝晶―流浪の民から騎士へと成り上がるアーディンの物語の二編。



1巻の二編は全くタイプの違う二人の強く気高い女性の物語であり、極上の恋愛ものだった。
翠輝晶のアイナは活力の満ち溢れた強い女性。
常に前向きでどんな困難にも決してめげず、夫への愛も妥協することなく本音をぶつけ続ける。燃えるようなアイナの情熱に圧倒される。そんなアイナだからこそ、苦難の連続の半生の中で小さな幸せを掴み取っていけたんだろうなあ。最期まで彼女らしく愛する者のために全力を出し尽くす姿に涙。


蒼輝晶のイズガータは元々強いのにそれ以上に強くあろうとする女性。
目的のために己を捨て、騎士としての能力も権力もさらに強くもっと上へと突き進んでいく彼女の姿に畏怖さえ覚える。そんな彼女が語り部であるアーディンの前でだけほんの少しだけみせる女性の表情に、身分違いの悲恋も重なって切なさが込み上げる。


1巻から既に傑作だった。完全に飲まれた。第一章も第二章も何度涙腺を刺激されたことか。
次はどんな物語を読ませてくれるのか、今回の二章とどう繋がるのか、国の行く末は?など楽しみが多くて、来年1月が待ち遠しい。仕掛け好きの多崎さんのことだから、最後にどんな風に驚かせてくれるのかも今から楽しみ。