いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「県庁おもてなし課」有川浩(角川書店)

県庁おもてなし課
県庁おもてなし課

とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家に観光特使就任を依頼するが……。「バカか、あんたらは」。いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む――いったい何がダメなんだ!? 掛水とおもてなし課の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々が始まった!?


読みにくかった。でも新鮮だった。
会話の大半が高知の方言ということで、見慣れない平仮名の並びに序盤は、いや、中盤くらいまで読むのに四苦八苦(おかげさまで予定読書時間を大きく超過して寝不足です)。さらに序盤はお役所らしい頭の固さや上から目線が鼻について、読みにくい面白くないで進まない進まない。
しかし、これが“爆弾”清遠氏の登場を気におもてなし課の意識改革がなされていくと一辺。面白くなり始めると同時に方言にも慣れ始め、ページを捲るスピードが一気に加速。
人の成長を傍から眺められるというのは気持ちが良いものですね。それに清遠や吉門の導き方がまたにくい。やり方は違えど自分で気付かせるという点は一緒で、県庁のマニュアルに縛られていたおもてなし課のメンバーに、少しずつ考える力が育っていくのが手に取るようにわかる。
さて、有川作品といえばベタ甘なんだけど、、、
メインの二人の恋愛は珍しく琴線に触れなかった。最後の締めは好きなのだが、過程がいまいちピンと来ない。まあ、もう一組の方でニヤニヤ出来たからいいか。
良い意味でも悪い意味でもおバカで明るい掛水より、吉門のように裏表や一癖二癖あったりするほうが、人として魅力的に写った。それがメインカップルともう一組の差であり、掛水を最後まであまり好きになれなかったのが原因かなと思ってみたり。もう一組が好きな理由は激情型でツンデレの佐和が可愛かったというのもあるけどw
人の成長に恋愛という小説としての魅力はもちろん、観光ビジネスの触りも学べるし高知の魅力も詰まっている一冊。やっぱり有川さんが書くものは面白い。