いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神さまのいない日曜日 V」入江君人(富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日V (富士見ファンタジア文庫)
神さまのいない日曜日V (富士見ファンタジア文庫)

「もっとぎゅっと握れよ」
夕日が赤くてよかったとアイは思う。アリスと繋いだ手のせいで、頬が赤くなっているかもしれないから――。
アリスに頼まれ、アリスとディーの故郷へと向かったアイ。しかしそこは、延々と14年前の一年間を繰り返す閉鎖空間だった。アリスと一緒にタイムループを解こうとするアイは、やがてそこに一人の生徒の死が関係していることを知る。
「俺たちを、3年4組をこの閉じられた世界から解放してくれ」
“外”の世界を望むアリス、同じ道を目指すアイ。そしてアリスの背を追い続けながらも決別したディー。それぞれの思いが交錯し――?

3巻の終わりからなんとなく付いてきた、アリスとディーの本当の目的が明らかになる5巻。



相変わらず唐突なオープニングで「?」から始まる“アリスの頼み”編は、予想外にコイバナでした。でも、この物語の世界観での恋愛模様がそんなに甘いはずはなく、切なさばかりが募る恋愛模様
いつものように突き進むアイと真意の見えないディーとアリス、三人がそれぞれに誰かを思っているのは分かるのに、全然噛み合っていないのだけははっきりとしていて、それが切ないやらもどかしいやら。そんな中で自分の気持ちに気づいた時のディーとアイは最高に可愛いのだけど、これも適わない未来が見えてしまっているので余計に切なさを増す。
アリスの頼みの本当の意味と覚悟のほどがわかった時と、いつも遠慮無しのアイが、初めて辛そうに相手を問い詰めている姿の二か所は特に涙を誘う。
・・・片隅に何故か新婚さんの空気を出している人たちがいたけど、気にしないことにしよう。
アイを愛でる話として読んできたけど、今回はそれ以上の面白さがあった。13歳になって一つ成長したアイが読めて良かった。
失敗でありハッピーエンドでもある、良かったのか悪かったのか判断し難いエピローグの真偽は次か。まったく先が読めないので逆に楽しみ。