いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ノーブルチルドレンの残酷」綾崎隼(メディアワークス文庫)

ノーブルチルドレンの残酷 (メディアワークス文庫)
ノーブルチルドレンの残酷 (メディアワークス文庫 あ 3-5)

美波高校に通う旧家の跡取り舞原吐季は、一つだけ空いた部室を手に入れるため、『演劇部』と偽って創部の準備を進めていた。しかし、因縁ある一族の娘、千桜緑葉も『保健部』の創設を目論んでおり、部室の奪い合いを発端に、奇妙な推理勝負が行われることになってしまう。反目の果てに始まった交流は、やがて、二人の心を穏やかに紐解いていくことになるのだが……。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、美しくも儚き愛の物語。

『花鳥風月シリーズ』の綾崎隼の新シリーズ。舞台は『花鳥風月シリーズ』と同じ、新潟の名家舞原家にまつわる物語。



日常ミステリ+高校生の恋愛と軽くて甘そうな題材なのに、黄昏時のような淋しさの付きまとう独特の雰囲気。『花鳥風月シリーズ』よりも、もう一段ダークなイメージ。
基本的には吐季と緑葉の恋愛がメイン。
直情型の緑葉が恋に落ちる様子や、無気力な吐季への不器用なアタックなど、恋の始まりの醍醐味を味わえるところもあるにはあるが、二つの名家、舞原家と千桜家の敵対の影が色濃く落ち、悲恋の方向にばかりいくつもの伏線が張られていて、恋が始まったばかりだと言うのに、すでに切なさばかりが付きまとう。
二人の生い立ち明かされる時や、他人の悪意に晒されるようになったら、もっと胸を締め付けられるんだろうなあ。吐季が他人を求める時が今から怖い。
日常ミステリの方は、ミステリとして楽しむというよりは、二人を結びつける道具としての役割が大きい。それと、事件の規模の小ささとは裏腹に、動機がどこか病んでいるものが多く、作品の雰囲気を作り出すのにも一役買っている。
予想以上にビターだったけど良かった。この作者が作り出す雰囲気が好き。想像通りの未来になってしまうのか、覆してくれるのか、続きが楽しみ。



とりあえず、有栖川教諭はどちらかの家の権力で社会から抹殺すべきw