いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「六花の勇者」山形石雄(スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)
六花の勇者 (集英社スーパーダッシュ文庫 や 1-11)

闇の底から『魔神』が目覚めるとき、運命の神は六人の勇者を選び出し、世界を救う力を授ける。地上最強を自称する少年アドレットは、その六人、『六花の勇者』に選ばれ、魔神復活を阻止するため、戦いへ向かう。だが、約束の地に集った勇者は、なぜか七人いた。その直後、霧幻結界が作動し、七人全員が森に閉じ込められてしまう。七人のうち誰かひとりが敵であることに気付いた勇者たちは疑心暗鬼に陥る。そして、その嫌疑がまっさきにかかったのはアドレットで――。伝説に挑み、謎と戦う、圧倒的ファンタジー、堂々始動!


重厚な世界観と泣ける物語が素晴らしかった『戦う司書シリーズ』の作者の新作は、ファンタジー+ミステリ。霧の結界の中というクローズドサークルで一人の偽物を探す逃追走劇。
特殊な力でどこまで出来るかがはっきりしないので、トリックから推理することは出来ないが、会話や振る舞いから犯人を推理するミステリの楽しみは十分にある。
でも、それよりも素晴らしいのが、武力で選ばれた六人+偽物一人の勇者たちが疑心暗鬼に陥りいがみ合う、緊張感溢れるバトルシーン。
何度もどんでん返しが起こるスリリングな展開に加え、好意に悪意、焦り、怒り、悲しみなどあらゆる感情が渦巻く逃追走劇には否応なく引き込まれる。
その中でも、追われる立場にありながら屈強な精神力と男気を見せてくれるアドレットの姿にはハラハラドキドキが止まらない。そしてそこから淡い好意も。アドレットの押しの一手にフレミーが心を開いていく様子は何とも山形さんらしい。
期待通り、いや期待以上の新シリーズの始動で大満足。
最後にとんでもない爆弾を落としていかれてしまったので、続きが待ち遠しい。