いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ノーブルチルドレンの告別」綾崎隼(メディアワークス文庫)

ノーブルチルドレンの告別 (メディアワークス文庫 あ 3-6)
ノーブルチルドレンの告別 (メディアワークス文庫 あ 3-6)

美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。二人の奇妙な推理勝負は話題を呼び、いつしかルームシェアした部室には、悩みを抱えた生徒が頻繁に訪れるようになっていた。緑葉の一方的で強引な求愛に辟易する日々を送る吐季だったが、ある日、同級生、琴弾麗羅の血塗られた過去が暴かれてしまい、二人の未来には哀しみが舞い降りて……。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる儚き愛の物語。激動と哀切の第二幕。


明かされる吐季の過去と、ほどけていく感情。
辛く切ないのは予想通り。でもこの展開は予想外。
許されない二人の恋には外側から圧力が掛かってくるのかと思っていたら、内側からのじわじわ追い詰められていくような展開になるとは。
吐季は何も悪くないのに、抗えない運命といくつかの不運で、彼を支えているものが少しずつ取り除かれていく様子は真綿で首を絞められているような嫌な苦しさ。
それに反比例して近づく緑葉との距離。今回のエピソードとしては緑葉の存在は救いになったけど、二人の距離が近づくほど、間違いなくある別れの瞬間の痛みが怖くなっていく。しかも、このままいくと完全に二人きりになった時、吐季の支えが緑葉しかなくなった瞬間に外からの力で引き裂かれそうな気がしてならない。
別離という爆弾の破壊力を上げるために、負のエネルギーを着々と溜めていくような2巻だった。読んでいて苦しい、でも何故か引き込まれる。
少しでも救いはあるのかないのか、二人の運命を最後までしっかりした形で見届けたい。次巻が大人の事情で厚い本になってませんように。