いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「竜宮ホテル 迷い猫」村山早紀(f-Clan文庫)

竜宮ホテル 迷い猫 (f-Clan文庫)
竜宮ホテル 迷い猫 (f-Clan文庫)

作家の響呼は、異界の住人が見える左目を持ちながら、その力と、それゆえに見える世界を否定して生きてきた。だが、住まいの古アパートが崩壊し呆然としていた響呼は、その傍らで泣く猫の耳としっぽのある少女と出会う。泣き倒れてしまった少女を連れ、今はアパートとなっているクラシックホテル「竜宮ホテル」で世話になるが、そこは、美しくもどこか不思議な場所で……。


f-Clan文庫創刊4作品の中の1冊。
他の3作品がどうなっているのかはわからないが、この作品だけでいうと
挿絵は一切なく、レーベルのキャッチフレーズ「恋だけが絆じゃない――」が表すように恋愛要素もなしと、女子向けライトノベルとしては珍しい落ち着いた印象を受ける作り。



内容は、
少し厳しい現実による切なさと、それを癒すちょっと不思議付きの優しさが同居する村山さんらしい作品(と言っても、作者の作品はコンビニたそがれ堂しか読んだことないけど)
一人の作家が引越ししつつ、家族がテーマのエッセイを書きあげる。ただそれだけの話なのだけど、家族というテーマと恵まれているとは言い難い主人公・響呼の境遇とで泣きどころが多く、それを包み込んでくれるような竜宮ホテルののんびりで温かい空気に癒される。心の琴線にそっと、でも確実に触れてくる文章が心地いい。
今回の続きでもホテル内の別の人の話でも話が広げられそう。続編は出るのかな?