いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「くずばこに帚星」石原宙(スーパーダッシュ文庫)

くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)
くずばこに箒星 (集英社スーパーダッシュ文庫 い 6-1)

廃墟の遊園地を流用してつくられた不思議な高校、了星学園。グレードチェア制度という特殊な序列システムの上、首席を目指す2ndチェア福山英知は、?学園の屑?おそうじ部へ潜入調査をすることになる。彼女らが隠れて探すものの正体を探るためだ。水川小花ら、厄介者揃いのおそうじ部員に翻弄されつつ、変人揃いの上位席者?チェア・オブ・シックス?の策謀も振りかかり、英知は下位席へ転落寸前。そんな中、遊園地復活を期する記念祭を迎え、おそうじ部の意外な探しものが発覚する。それは自分の過去に埋もれる英知に関わるもので…!? 青春おそうじスペクタクル!


感想を一言で言うなら「困惑」かなあ。
新人賞というと、大賞=完成度、何か光るものがある=佳作または特別賞という勝手なイメージがあるのだけど、大賞でありながらそのどちらも感じられない。
応募の時点でこんなに厚い(390頁)とは考えられないから、改稿や加筆でおかしくなったのでは?と疑ってしまうほど纏まりがない。



以下伏せ


ライトノベルではよくある変わったシステムの学園もの。母を探す天才な主人公と、落ちこぼれのおそうじ部の面々との交流で、テーマは友情や絆。
と、一本筋は通っているはずなのに、読んでいると迷子になっているような感覚に陥る。
新人賞にありがちな典型的な詰め込みすぎで展開が唐突でカオスだったり、伏線が浮いていたり回収されなかったりと問題点はいくつかあるが、恐らく一番の問題はキャラのぶれ。
登場時の説明と、中盤、後半では違う人のようになってる登場人物が多すぎる。
ネガティブなのはコメディ部分の台詞だけでポジティブとしか思えない小花。独特の毒舌と極度の男性恐怖症で初めは存在感があったのに、どんどん影が薄くなり、ついには設定まで忘れられるなつき。神経質をこじらせているという紹介はどこへやら、普通に好青年な匠。そして完全記憶能力で天才のはずなのに、やることにソツがありすぎてアホの子にすら感じる主人公・英知。他にも敵役の宇都宮や会長も最後は別人と、初めのイメージのままのキャラがほとんどいない。
キャラの魅力を出すのにギャップという要素は大事だけど、ここまで違うとキャラクターが掴めないので感情移入が出来ないし、当然感動もない。
おまけでラストのオチが主人公の設定に矛盾していたりもする。
本当に「どうしてこうなった」と首をひねるくらい設定も定まっていないし話もまとまっていない。もっとスマートであったであろう応募作品の方を読んでみたい。