いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」三上延(メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)

鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。
変わらないことも一つある──それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき──。


古書の香りが漂う静かで薄暗い店内に、かすれた口笛が加わわりました。
というわけで、古書薀蓄+日常ミステリ+ほのかなロマンスの『ビブリア古書堂』待望の第2弾。
主人公・五浦大輔一人で少し慌ただしかった店内も落ち着いて、作品の雰囲気もさらに落ち着いたものに。それ以前に栞子さんが店内に座っているだけでも嬉しかったりする。



今回は栞子と大輔のそれぞれの過去に触れる話が三編。


第一話 アントニオ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
小菅(一巻の女子高生)が妹の感想文を持ってくる。栞子の学生時代が垣間見える話。
日常ミステリは「もしかして」が「やっぱりか」になった瞬間が気持ちいいのだけど、その後の栞子の言い訳が可愛らしくてそっちの方が持っていかれてしまった感が。
大輔が興味を持った感想の違いよりも、栞子があの感想文を読んだ時に感じたのは、憤りだったのか懐かしさだったのか、もしくは恥ずかしさだったのかに興味がある。



第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
元クラスメイトの父が亡くなり蔵書を買い取りに。大輔の学生時代の友好関係がわかる話。
司馬遼太郎に関する薀蓄興味を引かれたり、高坂の父の想いを紐解いた栞子の洞察力に感心したりと色々あった第二話だけど、やっぱり帰ってからでしょう。
栞子からの歩み寄りと、妹に暴露される前日の行動にニヤニヤせずにはいられない。



第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房
買い取りの本を置いて消えた客の足取りを追う。栞子の母の話。
栞子の洞察力に感心しつつも、綺麗な思い出の真実が見えてしまうのはやはりどこか遣る瀬無い。
ところで栞子さん。母の所業を嫌がってますが、一巻の第四話で貴女がやったことも大概ですよ(苦笑 
大輔は異性として見られてないと言っているけどそうは思えない。というより、見ているからこそのあの発言と思えてしまうのは、良い方に解釈しすぎだろうか。



プロローグ・エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋4一冊の本を巡る栞子と母の思い出。
最後だけは大輔が紐解くのがパターンになるのかな?
それはそうと、負けの条件決めてない……あ、勝ちの条件とも言ってないのか。これ、勝っても負けても結果は同じだったんじゃないの?ニヤニヤ。二人の心境は違うだろうけど。
しかし、第二話といいエピローグといい不器用ながら少しずつ少しずつ距離が縮まっているのがわかるのが、嬉しいやらもどかしいやら。クラクラ日記に託された想いが、別のものでありますように。



2巻も文句なしで面白かった。雰囲気も、古書を絡めたミステリも、二人の関係も全て好み。
あとがきを読む限りしばらく続きそうで嬉しい限り。