いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ギフテッド」二丸修一(電撃文庫)

ギフテッド (電撃文庫)
ギフテッド (電撃文庫)

ギフテッド──神から与えられた頭脳を持ちながら、苦しみから逃れられない悲劇の存在を指す。
世界最高峰の企業、天子峰。その幹部となるため、俺たちは試験を経て閉鎖都市にやってきた。集まったのは天才ばかり。ただし、人権のないZランクの市民という扱いで……。
勘で必ず正解を言い当てる小学生、エル。不自然なほど才色兼備の女子高生、光明寺綾芽。そして退屈から逃れたかった俺、加納弥助。
何十人といる候補生たちの中で、栄光をつかむのは誰なのか。命賭けのゲームが始まる。


世界を牛耳る大企業・天子峰の変わった1次試験を抜けて集められた幹部候補生たち。彼らに課せられた次なる試験は、月1万の給料、与えられる権利は自衛権のみ、暴君の教官のいる寮生活など特殊な環境の中へ達成目標を告げられないまま放り出される謎のゲームだった――。
と、設定がかなり特殊で初めは面食らったが、読み進めると頭脳戦が面白く読み応えのあるサスペンスに。
人死こそないものの暴力等の犯罪はお咎めなしという過激な内容と息がつまるような閉塞感で、どこか『バトル・ロワイアル』に似た雰囲気がある。
でも、そこで行われるのはあくまでも頭脳戦。そしてその思考を披露してくれるのが、よく言えば常に冷静、悪く言えば感情の乏しい主人公・加納弥助。
初めのうちは、目的を見つけるところからスタートという特殊なゲームなので、あまりの自由度の高さに読み手の方が戸惑うが、理路整然とした弥助の思考を追うだけでもそれなりに面白い。
そして、天子峰の実態やゲームの意図がわかってくると、ゲーム(の出題者)や他の候補生たちの真意を読む頭脳戦が始まって本格的に面白くなる。
また、緊迫した場面では弥助の淡々とした様子が逆に緊張感を煽る形になっていてサスペンスとしても読み応えがある。
エピローグ(というか試験結果)が腑に落ちなくて狐につままれたような気分になるのが少々残念だが、概ね頭脳戦と緊張感が味わえる良質サスペンスだった。
あらすじを読んだ感じだと続きの構想はもうある? 昴とのフラグも気になるし、そもそもこの後どんな話になるか想像出来ないので読んでみたい。