いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「鳩子さんとラブコメ」鈴木大輔(富士見ファンタジア文庫)

鳩子さんとラブコメ (富士見ファンタジア文庫)
鳩子さんとラブコメ (富士見ファンタジア文庫)

僕こと平和島隼人は、平和島財閥の跡継ぎ候補。いずれ財閥のトップに立つべく、メイドの鳩子さんから帝王学を学ぶ日々なんだけど――「坊ちゃま。ぶつぶつ独り言を呟かないでください。気持ち悪いです」「坊ちゃま。わたくしに押し倒されたくらいで動揺するようでは、跡継ぎ候補として失格でです」「坊ちゃま。いくらわたくしが絶世の美女だからといって、いやらしい目で見ないでください。警察を呼びますよ」……うん、今日も鳩子さんは平常運転で容赦ないね。そろそろ新たな性癖に目覚めそうだよ僕は。
とまあそんなわけで、僕と鳩子さんがお送りする、タイトルに偽りなしのド直球ラブコメ! 始まります!


確かにタイトルに偽りはなかったが……。
主人公の一人称というのは普通だからいいとしても、語り口調も大まかな流れも『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』のまんま。設定も一部被っている。
こういうのしか書けない作家さんだっけ?と思ったが、『二ノ宮くん』の時はこうじゃなかったような。『お兄ちゃん〜』人気にあやかろうとコラボした『ニート吸血鬼、江藤さん』がイマイチだったので、思い切って似た作品で二匹目のどじょうを狙った。と邪推されてもおかしくないくらい似ている。
そうなると勝負はキャラの魅力なのだけど、性格の好みは人それぞれなので置いておいて、それとは別にギャップが圧倒的に足りない。
今作の主人公はヘタレ気味の好青年=『お兄〜』の秋人からシスコンを引いたようなキャラクター。ヒロインの鳩子さんは鉄面皮のメイドさん。どちらも最後までその印象は変わらない。鳩子さんに至ってはサービスシーンは満載なのに何事にも動じない鳩子の性格+開けっぴろげ過ぎで全然エロく感じないという残念さ。
秋人が真面目な口調でさらっと言ってのけるシスコン思考が面白かったり、押しの一手の秋子がしおらしくなった時が可愛かったりするわけで、第一印象通りの変化なしでは面白くない。
それでも最後の最後ぐらい鳩子さんがデレてくれるんじゃないかと期待してたのに、鉄面皮を剥がしかけただけ終了とは。
お約束の衝撃のラストも不発気味で、これを読むのなら『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』を読んでいればいいや、と思わせる作品だった。