いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ノーブルチルドレンの断罪」綾崎隼(メディアワークス文庫)

ノーブルチルドレンの断罪 (メディアワークス文庫 あ 3-8)
ノーブルチルドレンの断罪 (メディアワークス文庫 あ 3-8)

美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。決して交わってはならなかった二人の心が、魂を切り裂く別れをきっかけに通い合う。
しかし、奇妙な暖かさに満ちていた二人の幸福な時間は、長くは続かなかった。仇敵である舞原と千桜、両家の執拗な糾弾が勢いを増していく。そして、二人の未来には、あまりにも重く、どうしようもないまでに取り返しがつかない代償が待ち受けていて……。ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、儚き愛の物語。悲哀と遺愛の第三幕。


まさに嵐の前の静けさ。
過去の事件を追うだけで大きな事件は起きないこれまでで最も平穏な日常。そんな中で双方の実家の横槍が入りつつも、いつも通り自由に振る舞う緑葉と、彼女に少しずつ惹かれていく吐季。
その様子は本当なら微笑ましい恋物語のはずなのに、二人の置かれている状況のせいで二人が距離を縮めるほど切なさばかりが募る。さらに、追い打ちをかけるように各話の最後に必ず入る不吉な一文が入っているのが不安を煽る。
しかも、後半になるにつれどれが決め手になるかわからないほど、二人を切り裂く条件が次々と揃っていくという展開に戦々恐々。
前の巻で吐季が、この巻で緑葉がお互いに支えを失くし、寄りかかるところがお互いしかいなくなってしまった状況で、先に待つのはどう考えても別離。少しでも二人に救いはあるんだろうか。最終巻が怖いが楽しみ。