いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「夢の上 サウガ城の六騎将」多崎礼(C★NOVELSファンタジア)

夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア)
夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア)

サマーアにアライスという〈光〉現れ、人々は希望を取り戻す。
だが、〈光〉を未だ目にすることのなかった時代、〈光〉が己の輝きの萌芽に気づく前、その姿はどう映っていたのだろう。
混沌とする〈未来〉を決して諦めなかった者たちがいた。彼ら六人は時にアライスを支え見守り、救国軍の礎となる。そのケナファ騎士団の六士隊長の軌跡を追った連作短編集。

前の話の聞き手が次の話の語り部になるリレー形式の短編集。



短編集だからと軽い気持ちで読み始めたら六人の士隊長に半生を語られてしまった。短編集とは思えない重さと濃さ。結局いつの間にか引き込まれていた。
出自を問わない実力主義なために実力はあるが変わり者が集まるケナファ騎士団。その士隊長となれば歩んできた道が平坦なわけがなく、どれもハラハラさせられたり身につまされたり。でも、その傷こそが彼らの原動力であり、それぞれに辛い過去があっても笑顔があるのがケナファ騎士団の強さなんだと、勝った理由を再認識した。
六つの話の中で一番のお気に入りは無口な第三士隊長イヴェトの話。母であり和みキャラでもあった姉ちゃんが最高。やはりこのシリーズの女性は強い。次点でトバイットの話。ただの変態医師じゃなかったのねw
ただ、泣いたのは最終話のラストシーン。当人同士は初対面なのに、なんでこんなに切なくて温かいんだろう。
どの話でも感動出来て本編終了後の様子も所々に垣間見える、最高のサイドストーリーだった。