いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「創世の大工衆 刻を紡ぐ幻の音色」藍上ゆう(このライトノベルがすごい!文庫)

創世の大工衆(デミウルゴス) (このライトノベルがすごい! 文庫)
創世の大工衆(デミウルゴス) (このライトノベルがすごい! 文庫)

デミウルゴス――かつて武力ではなく圧倒的な建築技術で戦乱から民を救った伝説の大工。時は流れ、伝説に憧れながら、亜人の国で奴隷工として暮らす少年・カナトの前に、一人の少女・シアが現れる。高度な建築技術を持ちながら、性格に超難アリの彼女こそデミウルゴスの伝説を継ぐ者だった。そんな二人の元に、この国の女王からある建築の依頼が舞い込むのだが……。第2回『このラノ』大賞優秀賞作家が贈る新感覚・建築ファンタジー


主人公は大工。飛び抜けた建築技術による救世。
ラノベ読みとしても大学で建築を齧ってきたものとしても、あらすじの段階ではすっごい楽しみだったんだが……。



以下酷評


メインの二人が若い男女で武器に使えそうな万能道具まで出てきても、恋愛やバトルに寄らなかったのは好感がもてる。が、
肝心の大工の描写があまりにも中途半端。
専門家のはずのシアに、聞き齧った単語を並べただけのような台詞を言われたらがっかりする。過去の創世の大工衆の仕事についても「完璧な建築」というニュアンスの言葉がよく出てくるが、具体的な説明はないのでどこがどう凄いのか分からない。さらに言わせてもらえば、大工の話なのに建物がまともに描かれている挿絵が一枚も無いのもどうかと。
こんな風に不勉強を晒してボロを出すくらいなら、大工の仕事を完全に魔法の技術の100%ファンタジーにして現実の大工仕事と切り離してくれた方が良かった。
あと、気になるのが説明下手すぎること。
獣耳族の国の成り立ち、主人公の生い立ち(母方のみ)、大工衆の歴史。この三点についてほとんど同じ説明を何度も何度も繰り返しているのは何故? 章頭の過去の物語、キャラクターたちの台詞、地の文の三方向から説明されて、何度「くどい!」と脳内ツッコミしたことか。
また、ライトノベルとして致命的なのが会話が面白くない。
メインの二人がお互いを一個人として見ていないのでまともに会話が成立していない。シアは後ろを向いて、カナトはシアの上空を向いて話している感じ。
1作目はハイテンションバカエロコメディで台詞だけで笑えたが、今回は楽しめるところがなかった。真面目な作風は合わないのでは?