いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「瑠璃色にボケた日常」伊達康(MF文庫J)

瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)
瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

紺野孝巳は、霊障に悩まされる高校一年生。ある時、校内でも有名な霊能者の少女、有働瑠璃の所属する『お祓い研究会』を訪れるのだったが――おはらいではなくおわらい。そこはなんと『お笑い研究会』だった! 謎の会話から孝巳にセンスありと認めた瑠璃は、その場で孝巳を入部させてしまう。さらに“霊導師”を名乗る学校一の美少女、鴫原翠まで現れ――「フン、『霊感女』の称号なんて翠にくれてやるさ。私には『爆笑王』の称号と、『ミス青鶴高』の称号があればそれでいい」「その二つは同時に成立するのか?」――いま、霊と笑いに囲まれた非日常な青春が幕をあける! 美少女にツッコミまくる青春系フルスロットルコメディ!

あらすじの時点では買う気はなかったのに、えれっと絵に釣られた。



ヘビィだ。
会話メインのコメディにオカルト要素が加わったものと予想していたら、真面目に幽霊/死者の想いを扱っていて、しかもその背景が実に重い。
それをバカ正直で熱血漢な主人公・紺野の目線で追うので、人の想いの複雑さやすれ違いの切なさをより強く感じる。それでいて紺野の正義感や他キャラのちょっとした思いやりでホッと温かくなったりもすす。多くの遣る瀬無さと少しの優しさを残す、そのバランスが絶妙。
また、紺野と瑠璃の出会いから始まって、一つの大きな事件、解決後の二人の少女の仲直りへと澱みなく流れ、新人賞作品とは思えないほど綺麗に一冊にまとまっている。
人の死を含んだ人間ドラマとしても青春ストーリーとしても読ませる作品だった。


と、
要素がその二つだけだったら良かったのだけど、もう一つの要素「お笑い」が……。
ブコメとして読むなら、瑠璃や翠のキャラクター(個人的には翠がお気に入り)や三人の関係性は悪くなかったんだが、コメディがダメダメ。
『お笑い研究会』なのにコントの出来は残念としか言いようがなく、普段の会話もネタが不謹慎だったり、ボケるタイミングが悪かったりで笑えない。テンポも大事だけど場の空気も大切だと思うんだ。それに、シリアスに無理やりボケを入れるようなメリハリのないのは好きじゃない。
間違いなくMFっぽくなくなるけど、お笑いを捨ててお祓いと青春で勝負してくれたら評価はもっと上だった。