いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「再生のパラダイムシフト リ・ユニオン」武葉コウ(富士見ファンタジア文庫)

再生のパラダイムシフト リ・ユニオン (富士見ファンタジア文庫)
再生のパラダイムシフト  リ・ユニオン (富士見ファンタジア文庫)

未曽有の大災害によって一度、崩壊した世界。大陸は海に沈み、人類は潜水都市で暮らし、残留体という謎の敵の脅威にさらされながらも生き延びていた。
過去の事件によって、普通の高校生として当たり前の日常を過ごすことを拒絶する少年、風峰橙矢。想像を現実のものとする奇跡の力――思考昇華(パラダイムシフト)を振るい、残留体との戦いに救いを見出そうとする壊れた少年。
「あたしを拾ってくれてありがとう」
そして記憶喪失の無垢な少女。二人の出会いが、世界を再生させる! 第24回ファンタジア大賞<大賞>受賞作!!


一度滅びかけた人類に未知の生命体との争いというオーソドックスな近未来が舞台の王道ボーイミーツガール。
SDやMFに続いてファンタジアもこのタイプか。完全に新人賞の流行りだなあ。
評価としては、読みやすさは良、世界観の作り込みは可、キャラクターは良、ストーリーは良か可か悩むところ。王道中の王道なので分かりやすく盛り上がりやすい反面、先の展開が読みやすく台詞が白々しく感じるところも。
と、ここまではさしたる特徴なしなわけだが、それ以外で一つ大きな特徴が。
それは感情や気持ちの表現方法がとことん直接的なこと。ライトノベルだと『狼と香辛料』辺りとは対極に位置する存在。
愛情表現はそれこそド直球で、読んでいるこっちが恥ずかしくなるレベル。その拙さと必死さに「若いっていいなー」としみじみさせられたり、想いは伝わってこそだと改めて思わされたり。
こういう文藝畑では幼稚だと叩かれそうな表現方法でも大賞を取れる懐の深さはライトノベルのいいところだと再認識。
そんなわけで色々な意味で“若さ”を感じる作品だった。