いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く」瀬那和章(メディアワークス文庫)

好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く (メディアワークス文庫)
好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く (メディアワークス文庫)

七年前、年下の男の子に、好きだといわれた。それから、手も握らせないまま恋人のような関係をずっと続けている。そして、私はまた、彼とは別の人を好きになる――〈表題作より〉。
好きな人と好きになりたい人が、どうして違うんだろう(長女)。かっこいいって、卑怯だぁ(次女)。恋は魔物の巣窟です(三女)。神戸の街を舞台に、一緒に暮らす三姉妹の恋の、始まりと、真ん中と、終わり。同じ時間を過ごす三人の恋を、三篇の短編で描く、切なく優しいラブストーリー。恋は、いつだって、私たちの心をつんとさらっていく。


いい感じに甘かった!
勝手なイメージだと長女はフレンチトースト、次女はチョコレート、三女は抹茶の利いた渋い和菓子。
と、それぞれの恋愛模様の甘さと苦さもさることながら、三姉妹の間に流れる空気が良い。
お互いの恋の話ができるほど仲はいいけど秘密にしている部分もある、近い存在だけどくっ付きすぎない絶妙な距離感が作る暖かくて居心地の良さそうな空間。三者三様に外だと危なっかしい所のある姉妹だけど、マンション内のシーンになるとホッとする。三人一緒にいるのは束の間だけど、離れても変わらず居心地のいい場所であり続けるんだろうなあ。




好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く
長女・紗子
年長者で仕事は出来るけど、中身は一番乙女。無意識に悲劇のヒロインになろうとする辺りが特に。よって話は甘々に。
こういう形で決着したからよかったものの、もし違う結果だったら、初めにくさびを打ち込んだシュンくんと手放さなかった紗子、どちらが罪深いんだろうか。
まあ、なんだかんだ言ってこの話が一番好きだったりする。



恋にクーリングオフがあればいいのに
次女・朝美
ダメ男を好きになってしまう今時の女子。劣等感が強くてこの子はちょっと苦手。
ここの二人はこの先もよく喧嘩して別れるの元に戻るのを繰り返すんだろうなあ。
「過度な優しさはいらない。最低限の優しさが欲しい」それはその三姉妹の中にいるから言える台詞だよ。



嘘つきにシチューを混ぜれば
三女・結衣
人と違った感性を持ち引きこもり気味なイラストレーター。でも恋は人並みに。
この子にあらすじで言うところの“終わり”を任せるのか。ほろ苦いを通り越して苦いよ。特に失恋の仕方が。でも、嘘は止められなくても自分を騙す嘘と守る嘘から卒業できたのは大きな前進だ。
あと彼女が男の人と話している時の自然体が好き。コミュニケーション苦手どこ行った?


三姉妹のよるちょっとの切なさと少しの苦さと沢山の優しさがある恋愛小説。大変好みの作品でした。