いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「超粒子実験都市のフラウ Code-1# 百万の結晶少女」土屋つかさ(角川スニーカー文庫)

超粒子実験都市のフラウ Code‐1#百万の結晶少女 (角川スニーカー文庫)
超粒子実験都市のフラウ    Code‐1#百万の結晶少女 (角川スニーカー文庫)

奇跡の素粒子【グロア】が満たされた実験都市で、異能を持つ子供が生まれ始めて十数年。高校生の隼人は、ある日、空から降ってきた少女・フラウを受け止める。なんと彼女は悪名高い研究機関“ビショップ”に追われており、思わず庇ってしまった隼人は一緒に逃げるはめになるのだった。ところが彼女はなぜか子供のように無垢で、一般常識すら持っておらず、「フラウは人間に幸福をもたらす為に生まれてきたのです」と言うばかりで!?


近未来の実験都市を舞台にしたボーイミーツガール。大まかに説明すると「学園都市で『ちょびっツ』をやろう」という話らしい。
まず目立つのがアクションシーンのスピード感。冒頭の文字通り高速で繰り広げられるカーチェイスがあり、その他の異能バトルも自分の手の内を出し惜しみせずガンガン打ち合うので、分かりやすく決着も速い。これがなかなかの爽快感。
もう一つの特徴は青臭さ。
純真無垢を通り越して雛鳥のような存在のヒロイン・フラウに色々噛み砕いて教えるという意味もあって、綺麗だけど恥ずかしい台詞が飛び交う。素で「恥ずかしい台詞禁止!」と言ってしまいたくなるが、その若さに中てられるのは悪い気分じゃない。
ただ、どの要素もどこかで見たことある様な……。
作者の過去二作品にはあったその作品にしかない独自性やアナログゲーム好きらしい“遊び”の部分が、今作は感じられなかったのが残念。
起承転結もしっかりしていて読みやすく、表と裏で期待を持たせてくれるエピローグも良く、非常に完成度の高い作品。でも、オリジナリティを求める自分としては『放課後の魔術師』や『るうる』の方が好きかな。