「恋はいつか終わります――」
そんなことを言う後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女に手を貸す日々を送っていた。
――失恋探偵。
それはミステリ研究会の部室を根城にして行われる、学校非公認の探偵活動。恋に破れた人のために失恋の真実を調べる彼らのもとには、それぞれに失恋の悩みを抱えた依頼人（クライアント）たちが訪れて――。
第19回電撃小説大賞〈電撃文庫MAGAZINE賞〉受賞作の、叶わぬ恋の謎を紐解く学園青春"失恋"ミステリ。
あらすじには学園青春"失恋"ミステリとあるが、ミステリではないな。なにせ読み手にはフェアなヒントが与えられないから。
解決編で探偵の口から新事実が次々と出てくるものにミステリと付けないでください、あらすじ書いた担当さん。
まあ、そもそもこんなことを学校内でやっててバレてないのも、デリケートな問題に首を突っ込んでいるのに逆恨み等の問題が起きてないのもあり得ないが。ご都合主義も行き過ぎると違和感だけで主題が霞む。
それでも頑張って探偵を無視して恋愛青春小説として読めば楽しめる……たぶん
最大の売りはヒロインの百瀬。
感情の起伏が少なく常に淡々としている無愛想ヒロイン、表面上は。そんな娘が言動の端々に主人公への好意やヤキモチが見て取れる様子が大変可愛らしい。冒頭から髪の毛を任せている時点で相当なデレだよね。例によって主人公は気付かないけど。
そう、その主人公がちょっと……残念ながら自分には合わなかった。
優しくて良い人なのは分かるのだけど、逆に善人過ぎて考え方がよく分からない。主に沸点が不明。何にそんなに熱くなって／憤っているんだろうと置いてけぼりになることが何回か。恋愛や友情の青春もので語り部と同調できないのはきつい。汚い大人でごめんなさい。
二話目の依頼者のテンションにも付いていけなかったし、作品の出来以前にどうも作者とはフィーリングが合いそうにないなあ。
