いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ツギハギ運命翅1 〜新宿デイズ〜」熊谷純(オーバーラップ文庫)

ツギハギ運命翅(バタフライ) 1 ~新宿デイズ~ (オーバーラップ文庫)
ツギハギ運命翅 1 ~新宿デイズ~ (オーバーラップ文庫)

「ツギハギだらけじゃねぇか、この世の中」
大規模な感染症が蔓延した東京・新宿。人々はその出来事を忘れたかのように日々を送っていた。ただ、人でない”なにか”が確かにそこには存在していて――。
大いなる絶望と希望と欲望が交差する街を舞台に、多重人格の少年、モテたいとひたすら願うホスト、悪即斬をモットーにしたトラブルシューター、そして、普通の幸せを願う普通じゃない少女が織りなすジェットコースターストーリー!
マトモじゃない連中による、マトモじゃない連中のための、マトモじゃない物語、開幕――。


現代の新宿を舞台に、現代のネットワーク技術にちょっとSFをプラスしてオカルト(霊的な方面)を融合させた世界観の群像劇。完全にハードボイルドな裏の世界の話ではなく、明るく健全な話でもない、その丁度中間辺り。実際には昼の描写の方が多いのだが、夜の新宿の方がしっくりくる。そんな雰囲気の作品。
その雰囲気作りに一役買っているのが、キャラクターの年齢層と男率。主要キャラのほとんどを二十歳以上の男性がしめる。ぶっ飛んだ思考の大人な男たちが盛り上げる物語、良いと思います。と言いつつ、お気に入りは銃ファンキーの紅音ちゃんだったりするのだが。
また、群像劇は初めのワクワク感が強いので裏切られることが多々あるのだけど、この作品はいい意味で裏切られた。バラバラの視点で情報が少しずつ小出しにされていて、物語に行き先が全然読めないのが特徴で、あれこれ先を想像しながら読んでいたいのだが、流石にこの着地点は読めなかった。
主人公の一人アキラの能力が万能すぎたせいか終盤盛り上がりに欠ける面はあったが、展開が予想の上を行かれたことと、謎や登場事物それぞれの思惑を含め綺麗に収束するので読後感は非常に良い。というか、タイトルに『1』とあるから伏線張ってある程度盛り上げて終わりなのかと思ってたので、きちっとカタが付いたことにちょっと驚き。昨今のライトノベルとしては良心的だよね。
逆にここからどう続けるんだろう。舞台と登場人物は同じで全く別の事件になるのかな。