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「蒼天のサムライ 第一章 端琉島脱出戦」田代裕彦(オーバーラップ文庫)

蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦 (オーバーラップ文庫)
蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦 (オーバーラップ文庫)

竜洞マスミと竜部シンヤの名を知らぬ者はない。二人の名は天津煌国(あのつこうこく)の滅亡とともにいつまでも語り継がれていく。
煌国の下士官竜士である竜洞マスミは赴任先の端琉島で親友の竜部シンヤとその妹、アユネと再会を果たす。竜巣艦の教官を拝命したマスミだったが、敵国であるグロース帝国が端琉島へ奇襲攻撃を行い、部隊は甚大な被害を被ってしまう。かろうじて難を逃れたマスミとシンヤは、住人と負傷兵を脱出させるため、絶望的な戦力差のなか、敵国の戦闘機部隊との戦いに赴く。煌国の歴史が大きく動くこの戦いは後に《端琉島脱出戦》と呼称されることとなる。
壮大なスケールで描くファンタジー戦記、開幕!


竜vs戦闘機のファンタジー戦記。
息詰まる空気やきな臭い政治の駆け引き、身近な死などの戦時中らしいシリアスな雰囲気に、圧倒的不利な状況から相手の手を読み戦略を立てる戦記ものの醍醐味もありで、舞台は申し分なし。
そして、その極限状態で繰り広げられる友情と愛情が絡む人間ドラマも面白い。
しかし、如何せんパワーバランスが悪かった。主人公ペアが強すぎて戦闘が面白みに欠ける。
軍対軍の真面目な戦争を描いていて、しかも逃げる為の作戦を立てているはずなのに、そこで俺TUEEE!されても場違いというか台無しというか。台詞には焦燥感がありながら結局一人で片を付けてしまうので、さらにチグハグな感じが増している。
苦戦して何人もの戦死者を出している他の竜と戦闘機の戦いの描写があれば、もう少し印象が違ったのかもしれないけど……。第一章だから竜の強さを見せておきたかったのかな? う〜ん。
それでも、これから彼らを取り巻くであろう過酷な運命は気になるし(今のところ対立する構図が思い浮かべられないがどうなる?)、竜の優位性も薄れていきそうな気配なので(ペアも変わるし)、第二章は読もうと思う。