いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「隣人は真夜中にピアノを弾く」陸凡鳥(ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く (ガガガ文庫)
隣人は真夜中にピアノを弾く (ガガガ文庫)

出会った男は悪魔だった。彼は私に言った。望みを叶えてやろうと――。
ひとりの男が殺された。“悪魔”だと名指しされたその男の死について調べるため、とある街へと派遣されたバド。同僚のリッチとともに、不可解な殺人事件に関わっていくうち、彼らは仕掛けられた罠にはまり込んでいく。悪魔に魅入られた権力者、悪魔と関係する女、さらには悪魔を狩る組織……。人間社会に寄り添い、『隣人』として生きる悪魔たちには厳しい掟(ルール)がある。契約に縛られた元人間の悪魔の生き様を描くサスペンス・ハードボイルド。

ラノベレーベルとしては大変珍しいガチのハードボイルド作品。
ガガガ文庫コップクラフトをわざわざ多レーベルから救済した過去もあるし、編集部にハードボイルド好きがいるのかね?)
悪魔が話の中心になっているところが唯一のライトノベルらしさか。とはいっても社畜同然の下っ端悪魔の世知辛さがメインなので、華やかさはまるでないが。
雰囲気は完璧に好みだった。
硝煙と紫煙の匂いに、もの悲しげなピアノの旋律。“いい女”を漂わせる上司に、スタイリッシュとは程遠い泥臭くもがく男たち。そこに遣り切れない過去と今の両方が合わさって、何とも言えない哀愁を醸し出す。これライトノベルでやっちゃいますか。
と、そこは良かったのだけど、、、これはちょっと主人公が無能すぎやしませんかね?
調査は相方に頼り切り、対抗勢力に捕まっても無抵抗でなりゆき任せ。事件の顛末は犯人が語るし、解決も上司の助けを得てなんとか。バドくん、君いる意味あった? 最後の最後ぐらい活躍してくれないと物語として締まらないだけど。
雰囲気は満点だっただけに、物語がオチなしで終わってしまったようで残念な気持ちだけが残った。