いつも月夜に本と酒

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「八百万の神に問う2 夏」多崎礼(C★NOVELSファンタジア)

八百万の神に問う2 - 夏 (C・NOVELSファンタジア)
八百万の神に問う2 - 夏 (C・NOVELSファンタジア)

天路ノ国の北の果てに『楽土』はある。
少年・シンはここで、伝説の音導師イーオンと暮らしていた。
『楽土』の中でも『真の楽土』と呼ばれるそこは、夢も希望も持たぬ心穏やかに死を待つ者たちのための場所である。幼き少年は、なぜそこまでの絶望を抱えているのか――


2巻夏は伝説の音導師イーオンの付き人・シン少年の物語。
なにかと他人を敵視するシン少年の過去とは。イーオンやサヨと共にゴノ里に滞在することになったシンは、そこで出会った孤児の少年少女たちと平穏な日々を過ごしながらも、ふとした情景やちょっとした事件から過去の傷が呼び起こされていく、という展開。
そこで見えてくるのがイーオンの優しさ。
これは人間不信にならない方がおかしいと思えるほどの想像以上に過酷なシンの生い立ちに憤りを覚えながらも、それと同時にシンをパシリのように使うイーオンの真意が段々と明るみになっていく。
辛辣に思える彼女の言葉の裏に、一人の少年を立ち直らせる力がこれだけこもっていたとは。話が進むにつれてどんどん彼女の言葉が沁みるようになってくるのが心地いい。優しい言葉をかけることだけが救いの手じゃないということを、教えてもらった。
また、今回特徴的なのがシンの感情表現方法。他人の言葉の印象を味覚で表現する。
結構使いやすいのよね、味覚。感情を言葉で表現するのが得意ではないので自分もわりと使ってしまう。と、変なところで共感してしまった。
そんなこんなで今回も間違いなく面白かったのだけど、1巻に比べると少し物足りなかったかな。
生い立ちが不幸な少年ということで話の先が読みやすく、一回きりだった音討議がイーオンの一方的な勝利でディベートになっていなかった。イーオンの話術の妙、言葉のマジックを読みたかったんだが。
そんなわけで少々トーンダウンして終了……かと思いきや、ラストでどんでん返しが。流石にの話の転がり方は予想できない。イーオンが酒に溺れているのにも何か理由がありそうだし。秋が気になる。