いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ビブリア古書堂の事件手帖5 〜栞子さんと繋がりの時〜」三上延(メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)

静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。物思いに耽ることが増えた彼女はついにこう言うのであった。必ず答えは出す、ただ今は待ってほしいと。
ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。いわくつきのそれらに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。
脆いようで強固な人の想いに触れ、二人の気持ちは次第に近づいているように見えた。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。この邂逅は必然か? 彼女は母を待っていたのか? すべての答えが出る時が迫っていた。


なんということをしてくれたのでしょう。
「おおおおお」となって「おいっ」を挿んで「えええええ」となる忙しいエピローグ。万歳しようとした手を無理やり上から押さえつけられたような終わり方で、喜びたいのに喜べない。怒りとももどかしいとも違う変な気分だ。
と、いきなり最後から語ってしまったが、4巻の突然の告白と不穏な母の動きを受けた5巻は、大輔の告白を有耶無耶にせず真正面から受け止めた栞子さんが全力で可愛い。
当事者の大輔は不安になったりしていたけれど、栞子には断りそうな雰囲気がまるでなかったので、シリーズ屈指の甘さ。栞子が赤面するたびに頬が緩む。
古書を巡るミステリはいつも通り「その本が読みたくなる」独特の面白さ。
最も気になったのは第二話の手塚治虫ブラック・ジャック』。自分が読んだことのあるものが出てくると話への入りやすさが違う。話もコレクター魂をくすぐる話で興味深い。学校の図書室で読んだのは出版社どこだったんだろうなあ。そこまで気にして読んだことがなかった。
4巻からのもう一つの伏線、母との確執も一応一段落なのかな? まだ何かありそうな気はするが。それにしても最後の一言、あの母親でも娘の心配なんてすることがあるんだな……それだけ奴はやばいってことかも。
最後は感情をどっちに持っていっていいか困ったが、基本的には本の話は面白い上に幸せな気分に浸れて満足な一冊だった。