いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「絶対城先輩の妖怪学講座 三」峰守ひろかず(メディアワークス文庫)

絶対城先輩の妖怪学講座 三 (メディアワークス文庫)
絶対城先輩の妖怪学講座 三 (メディアワークス文庫)

東勢大学文学部四号館四階四十四番資料室。そこに収められた妖怪学に関する膨大な文献は、絶対城が師匠であるクラウス教授から引き継いだものだった。
相変わらず怪奇現象の相談が後を絶たない資料室に、ある日、独逸語で書かれた文章と謎のスケッチの入った手紙が届けられる。見事スケッチの謎を解いた絶対城。そんな彼の前に、クラウス教授が現れる。久し振りの再会に話が弾む師弟。しかしクラウス教授は突如、資料室を文献ごと返し、妖怪学をやめるよう絶対城に告げるのだった。
四十四番資料室に最大の危機到来。伝奇ミステリ第3弾。


天狗の正体はなんと……!?
毎回、幅広い妖怪薀蓄とそこから導き出される推論で楽しませてもらっているが、今回は極上。これまでで最もぶっ飛んでいて「それはない」と思いつつも、絶対城の持つ不思議な説得力で思わず肯いてしまいそうになる。言葉は悪いが、この上手く騙されている感じがとても面白い。これで無駄にファンタジックなアクションシーンが無ければ最高なんだけど。
それに今回は一章から五章までの流れが美しい。その章の本筋とは関係なさそうな出来事やついでにと付け足した薀蓄や最後の五章に繋がって収束していく様が綺麗で、解決編の絶対城の語りで思わず唸った。
キャラクターで最も動いたのも絶対城。一度恩師に打ち負かされて弱ったというのも一因だけど、随分とデレたもんだ。ユーレイちゃんと目と目で会話しはじめちゃってるもの。これは杵松さんが嫉妬するのも仕方がない。
また、デビュー作から読んでいる読者にはちょっと嬉しい記述も。三章「鎌鼬」では本当にイタチ好きなんだなと思わせる台詞があったり、天狗の話では奈良山が鳥顔な理由が分かったり。
今回も思いっきり趣味の話で面白かった。三巻の壁を超えて次もあるそうなので楽しみ。