いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神様の御用人」浅葉なつ(メディアワークス文庫)

神様の御用人 (メディアワークス文庫)
神様の御用人 (メディアワークス文庫)

神様たちの御用を聞いて回る人間──“御用人”。ある日突然、フリーターの良彦は、狐神からその役目を命じられた。膝を壊して野球の道を諦め、おまけに就職先まで失った良彦は、古事記やら民話やらに登場する神々に振り回されることになり……!?
特殊能力もない、不思議な力を放つ道具も持ってない、ごく普通の“人間”が神様にできること。それは果たして、助っ人なのかパシリなのか。けれどそこには、確かに神々の「秘めたる願い」があった。モフモフの狐神、黄金とともに、良彦の神様クエストが今幕を開ける!


黄金様かわいいよ黄金様。
狐神の黄金(こがね)様がめっちゃラブリー。
態度は偉そうでも食べ物に弱いので威厳は皆無、狐のくせに寝てる姿は完全無防備。これはモフモフしたくなりますわ。文句は多いけどなんだかんだで面倒見がよく、説教はしても見下したり蔑んだりしない嫌味のなさもいい。


物語は、あらすじにはパシリとあるがどちらかと言えば神様へのお悩み相談。
かなりの俗物でどこか子供っぽい神様たちの悩みを、神様に対してもタメ口な現代っ子なあんちゃんが不器用ながらも解決していくハートフルストーリー。
野球一筋だったのにそれを絶たれ、会社にも居られなくなりとどん底近い状態ながら、本人の根が熱血漢なのか暗い雰囲気はなく、また神様たちの願いもそこまで深刻なものは無いので明るく軽く読みやすい。
全四編あるのだが、主人公・良彦の人の良さが随所に出てくる話あり、隠れた熱血が発揮される話ありで、どの話も晴れやかな気分で読み終われる。
但し、良彦本人は「ちょっと前向きになれかな」程度の変化で終わってしまっているので、最後に物足りなさが残る。続刊があるのなら何の問題もないが……。
前作「香彩七色」も気になるだけに、どちらの続きも読みたいこのジレンマ。