いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「博多豚骨ラーメンズ」木崎ちあき(メディアワークス文庫)

博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)
博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)

福岡は一見平和な町だが、裏では犯罪が蔓延っている。今や殺し屋業の激戦区で、殺し屋専門の殺し屋がいるという都市伝説まであった。
福岡市長のお抱え殺し屋、崖っぷちの新人社員、博多を愛する私立探偵、天才ハッカーの情報屋、美しすぎる復讐屋、闇組織に囚われた殺し屋。そんなアクの強い彼らが巻き込まれ、縺れ合い紡がれていく市長選。その背後に潜む政治的な対立と黒い陰謀が蠢く事件の真相とは──。
そして悪行が過ぎた時、『殺し屋殺し』は現れる──。


福岡市を舞台にした殺し屋たちの群像劇。
殺し屋が蔓延る魔都が舞台とあって人があっさりと死んでいくが、作品の雰囲気はコミカルで暗さは全くと言っていいほど感じない。また、文章も簡素で読みやすく、明るい雰囲気と相まってサクサク読める。
とにかくストーリー構成が素晴らしい。
それぞれバラバラに始まる殺し屋たち(+探偵、刑事)の物語が、ターゲットが被ったりお互いが標的になったりして、徐々に絡み合い、最後には一点に収束していくストーリーが美しい。さらに本編と関係なさそうなタイトルへと繋がり、綺麗なオチまでつけていくエピローグは見事の一言。流石大賞作品だと唸らせるものがある。
但し、キャラクターが弱い。
こんなぶっ飛んだ話のキャラクターなのに驚くほどクセがなくあっさり風味。それに皆さん、殺し屋なんて危険で阿漕な商売しているのに何でそんなに素直なの。宗方とかジローとか、タイトルに見合う脂っこいキャラクターに出来そうな素材は何人もいたのになあ。
美味しかった(面白かった)。でもこれは、豚骨ラーメンではなく醤油ラーメンの美味しさだ。やっぱり電撃小説大賞の大賞作は完成度とクセなさ重視なのかね。まあ、電撃文庫で出た大賞作品に比べれば全然個性があって良かったけど。