いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。9」左京潤(富士見ファンタジア文庫)

勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。9 (富士見ファンタジア文庫)
勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。9 (富士見ファンタジア文庫)

勇者試験直前に魔王が倒されてしまい、勇者になれなかった少年ラウル、父親である魔王が倒されて居場所が無くなった魔王の娘フィノ、ラウルの勇者予備校時代のライバル・アイリの三人は、王都にあるマジックショップで一緒に働いていた。
ユニィの王位継承に合わせて勇者制度が復活!? 試験に挑戦することを決めたラウルとアイリだったが、こんなときにフィノの魔力が大暴走。ラウルと1m以上離れられない呪いがかかってしまい……。さらに正社員登用試験に向けて張り切るフィノの前に、久々にあの男が登場。その目的とは――。
勇者と魔王の卵が織りなすハイテンション労働コメディ!!


そうそうこれこれ。これが読みたかった。
前の長編7巻の出来が酷かったのでどうなることかと思ったが、今回は良かった。
現実に即した細かいバイトの話、このファンタジーらしくない世知辛い感じがこのシリーズの持ち味だ。
それと真っ直ぐすぎて青臭いけど、しっかりとした成長が感じられる後半部分。
今回は、ラウルには勇者試験の復活という夢の残滓が、フィノには魔人の衰退という現実が突きつけられる。その中で自分は何ができるのか、何がしたいのか、ラウルは煮詰まりながらフィノは周りの意見を柔軟に取り入れながらと、自分の個性に合った方法で答えを見つけていく過程が丁寧に描かれていてとてもよかった。
そして二人の成長が見えるエピローグ。フィノが常識を語る側になるなんてねえ(しみじみ 申し分ないラストシーン、この作品らしい良い最終回だった……って、あれ? 続くの?
綺麗にまとまっていてこのまま終わっても何の文句もないのだが。今回は薄かったラブコメの方でも答えを出すのかな?