いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「奇械仕掛けのブラッドハウンド」ついへいじりう(ガガガ文庫)

奇械仕掛けのブラッドハウンド (ガガガ文庫)
奇械仕掛けのブラッドハウンド (ガガガ文庫 つ 3-1)

猟奇殺人が起こる街。一家を襲った悲劇。そして数奇なる運命の車輪は回り始めた……。街を襲う潰殺事件。街の片隅で探偵稼業を営む芥宗佑は潰殺魔に家族を殺された後輩・栂貴織をかくまうことになった。貴織に依頼された人捜しを進めるなか、宗佑は蠢く「指」の因縁に絡め取られていく。息の合わない相棒・神楽ヰ音耶との調査が難航しつつも、宗佑は事件の真相に辿り着くが……。かくして、銀の鉄槌は下り、紅き執行者が断罪を司る。繰り広げられるは「指」に魅入られた愚者達の輪舞曲――。第8回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞受賞作!!


付けると異能を使えるようになるが精神が汚染される〈不思議な義指〉を題材にした異能バトルもの。
「ガガガ大賞」という色眼鏡で見てしまっているせいもあるのだろうが、血生臭いこと以外はえらく普通のライトノベルだった印象。
大賞作品らしくストーリー構成にはソツがなく、異能バトルの戦闘描写も分かりやすく読みやすい。猟奇殺人や血という舞台装置だけに頼らないダークな雰囲気作りが上手く、時折入れるコミカルな描写で重くなり過ぎないバランス感覚も持ち合わせている。
反面、キャラクターはちょっと弱いか。
特に主人公は度々訴える甘い理想に、説得力を持たせるだけの行動がなかった。助手と違って戦闘能力もないので、本当にただの甘っちょろい学生でしかなくなってるのが残念。
……と、長所も短所も突き抜けたところがないのが一番の短所かも。
恐らく完成度重視だったと思われる去年の大賞『カクリヨの短い歌』にも和歌という要素とクセのあるキャラクターという目に付く点があったが、本作はこれでしか読めないという特筆すべき点は見当たらない。
血生臭いとか救いがない系の話が好きな人なら安心して楽しめる作品だと思う。そうでない人には楽しめるところが特にない。