いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「人類は衰退しました9」田中ロミオ(ガガガ文庫)

人類は衰退しました (9) (ガガガ文庫)
人類は衰退しました 9 (ガガガ文庫)

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の”調停官”であるわたしのお仕事。月に行ったまま音信不通となった祖父の訃報(のようなもの)が届き、わたしは祖父を捜しに月に行くことを決心。そんなわたしに妖精さんがくれたのは、『いま ←→ さいしょ むせいげん』と書かれたフリーパス。人類の進化が車窓に流れる蒸気機関車に乗った、わたしが着いた旅の終着駅は夢? それとも……。 ついに、かんけつです?


やっぱりこの前後編で終わりかあ。残念だが仕方がない。


祖父が月で遭難?でピリピリムードから始まる最終巻。
スタートは月へ行く方法を探るという名目で始まった、妖精さんといく999的人類史+妖精さん史閲覧ツアー。
どうしてこうなったと思いつつ、妖精さんの所業らしさにちょっと和む。
……うん、この頃はスパッとおじいさん見つけてあははっと帰ってくるんだろうなー なんてお気楽に考えていたんですよ。それがこんな本気でSFし始めるなんて。
しかも、ただの単発SFではなく、このシリーズの根源「妖精さんだから」で片付けられていた事柄を拾っていく壮大なスタイル。
「地球はすでに妖精さんのもの」という文句は比喩でも人類の自嘲でもなかったんだ。幸いにもこのシリーズに関しては『いま ←→ さいしょ むせいげん』の切符を持っているので、最初から読み返してみよう。……時間が出来たら。
時々解釈が難しいところがあって何度か戻って読み返したりしたけど、それを含めて読み応えのあるSFだった。
最後が本気のSFでこれまで続いてきた社会風刺の側面が一気に薄れてしまったのだけが心残りだけど、それは今後出る短編集に期待という事で。