いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「白銀のソードブレイカー II ―不死身の剣聖―」松山剛(電撃文庫)

白銀のソードブレイカー (2) ―不死身の剣聖― (電撃文庫)
白銀のソードブレイカー (2) ―不死身の剣聖― (電撃文庫)

《世界の敵》となり、逃亡生活を送る《剣聖殺し》エリザと傭兵レベンス。しかしそのさなか、不意に現れた新手の剣聖・デュランダルの襲撃により、剣聖に対する切り札であったエリザの魔剣はいとも簡単に折られてしまった……! 茫然自失となるエリザ、驚愕するばかりのレベンス。絶体絶命となった二人の前に現れたのは、エリザがかつて刃を交え、倒した剣聖の一人であるヴァリエガータだった。果たして彼女は、敵か味方か。そして魔剣を失ったエリザは……!?
血と剣の絆の物語、第2幕。 


1巻がレベンスがエリザを見守る話とするなら、2巻はレベンスが自分自身を見つめ直す話。
1巻のスピード展開から一転して、腰を据えての一冊一話。今回はじっくり楽しめた。倒したと思ったヴァリエガータが出てきたり、デュランダルが異次元の強さだったりで、もう何巻か続きそうなのが嬉しい限り。
それにしてもヴァリエガータのおかげですっかり“ゆかいな仲間たち”になった。彼女の経験と強さに裏付けされた余裕と持ち前の茶目っ気が場を和ませ、その交友関係で輪が広がる。新キャラのサンちゃんは正統派に可愛かったが、今後もレギュラー化するのかな?
残念ながらメインのエリザは開始早々が倒れてからずっと臥せっているので、エリザとレベンスの微笑ましいやり取りは少ない。でも、その分平時でも庇護欲をそそるエリザの弱々しい姿にキュンとする。まあ、段々とそんなこと楽しめない空気になっていくのだが……やっぱり作者の作品はシリアスに入ってからが本番だね。
レベンスが悩んで悩んで自分の道を見定めて行き付いた先が、、、思わず叫びたくなる。
この巻単体で読めば、男の子が女の子の為に奮闘した微笑ましく温かい物語なのに、どうしてこんなに切なくてやり切れないんだろう。周りがエリザの為に頑張れば頑張るほど、未来のエリザが泣きながら剣を振るう回数が増えていくというジレンマに襲われる。
今のところ涙以外のラストは見えないが……。そうならない未来をレベンスは切り開いてくれるのだろうか。