いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン VI」宇野朴人(電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (6) (電撃文庫)
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (6) (電撃文庫)

軍事クーデターが起こり、カトヴァーナ帝国内でイグセム派とレミオン派が激突する。それはイクタたちにも影響を及ぼし、イグセム家のヤトリは父のもとに戻るべく、騎士団を離脱。またレミオン家のトルウェイは、父と対峙することを決意。そしてイクタは、父バダ・サンクレイの残した独立部隊「旭日連隊」を率いて、内戦を収めようと立ち上がる。激しく揺れる帝国で、それぞれの想いを胸に戦場を走る少年少女たち。彼らの未来に希望はあるのか…?話題沸騰の本格派ファンタジー戦記、待望の6巻が登場!


この緊迫感、この物語への引き込み力。やっぱりアルデラミンは別格で面白い。

前巻の衝撃のラストに続くクーデター編。
国内分裂によるこれ以上の国力低下を避けるべく立ち上がったイクタ。これは主人公の八面六臂の活躍が!と思いきや、予想に反して今回はトルウェイの番。
まずは、前回で一皮剥けたマシューがお手本とばかりに死線をくぐる。本当に頼もしくなったなマシュー。所謂「当番回」で成長したキャラをその回だけで終わりにしないで、成長後の活躍を濃く書いてくれるのが嬉しい。
そして今回「当番回」のトルウェイは、、、この決着も予想外だ。てっきり死を乗り越えるものだとばかり。
戦場では「臆病」になってしまう彼の持つ本質的な優しさはそのままに、軍人としてだけでなく人として一皮剥けた姿にジーンときた。
また、今回はメインキャラ以外にも父親たち以上の年代のキャラの活躍が目立った。
その筆頭がマシューやトルウェイに立ちはだかった、齢七十にして戦闘狂ヨルンゼフ=イグセム。その圧倒的な戦闘能力と威勢で戦場の緊張感や絶望感を一気に引き上げ、面と向かって話せば年長者としての言葉をくれる。やっぱり戦争ものにはこういうキャラが欲しい。
決着が着かないまま続いてしまい、ラストの出来事の結末と狐宰相の思惑も気になるが、間もなく攻め込んでくるであろうキオカの動向はもっと気になる。次のメインも、イクタではなく思わぬ人物に心に風穴を開けられたヤトリになるのか、前回フラグだけ立てられて今回何もなかったハロになるのか、今度こそイクタなのか。気になることだらけで、続きが待ち遠しい。




挿絵のさんば挿先生が健康上の理由で降板だそうで。残念です。お大事に。
後任は、明らかな人選ミス。萌え絵描く人に頼んでどうする。上手い下手の問題ではなく単純に合わない、分野違い。武器も軍服もオモチャみたいだし、親父たちや爺の威厳の無さに泣けてくる。
急遽代役の絵師さんには申し訳ないが、もう挿絵は要らない。地図さえあればいい。