いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「エスケヱプ・スピヰド 七」九岡望(電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド 七 (電撃文庫)
エスケヱプ・スピヰド 七 (電撃文庫)

雪解けの始まった落地では、鬼虫と甲虫の最後の戦いが始まった。
剣菱の前に立ちふさがるのは、戦闘狂の烏帽子。上空では、竜胆が虎杖と兄弟の因縁の戦いを繰り広げていた。叶葉たちも、神鯨の乗組員の説得に当たろうと艦橋へと赴く。そして、九曜と朧の戦いもまた――。
譲れない信念を掲げた鬼虫と甲虫、果たして生き残るのはどちらか。人間から、兵器となった“鬼虫”シリーズたちの、戦中から続く長い戦いがついに終わりを告げる。兵器の少年・九曜と人間の少女・叶葉の向かう未来とは――?
最強の兵器たちの神速アクション、本編感動の完結!


最終決戦に相応しい、戦い戦い戦いの最終巻。
剣菱と烏帽子の戦闘狂対決を皮切りに、各所で激しい戦闘が繰り広げられる。そのどれもが各々の信念のぶつかり合いで、戦闘の激しさ(アクションの派手さ)よりもその生き様に心が熱くなる。それと同時に、立場や考え方の違いや、どうにもならない運命によって戦わなくてはならない事実に切なくなる一面も。伍長の戦いは特に切なさが強い。
純粋にアクションとして一番盛り上がったのは菊丸の章。
戦力のインフレがなくて一番理解しやすく、対機械で相手との対話ではなかったのが理由。そして何より菊丸は格好いい。今までも護衛ロボットらしからぬ漢気を見せてきた彼だが、今回は輪をかけて勇ましい。鬼虫のような特別な力がなくても、持てる力を最大限に発揮して目的を達成する姿に惚れる。やっぱりあんたがNo.1だ。
それにしても数巻前の状態からは想像もつかない着地地点だった。
最後の相手は竜胆だろうとか、九曜以外の鬼虫は全滅するのではないかとか、帝都の復興は振り出しに戻るのではないかとか、負の方向の想像ばかりが浮かぶ流れだったのだが。それだけ鬼虫たちの頑張りと絆が、虎杖の想定を上回ったということか。あまりに綺麗に終わったものでなんだか終わった実感がわかない。
ロボットアクションでありながら、しっかりと練り上げられた世界観とキャラクターがあった上で、とことん人の心を描く人間ドラマだった快作。
素晴らしい物語でした。次回作も期待しています。


でもその前に、
帯もあらすじも“本編”完結を強調してるから、短編集かなにか出るのかな?