いつも月夜に本と酒

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「二度めの夏、二度と会えない君」赤城大空(ガガガ文庫)

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)
二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫 あ 11-8)

突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし……そして、燐は死んだ。俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔――決して伝えてはいけなかった言葉。俺があんなことを言いさえしなければ、きっと、燐は最後まで笑顔でいられたのに……。――二度めの夏。タイムリープ。俺はもう一度燐と出会う。あの眩しい笑顔に再び。ひと夏がくれた、この奇跡のなかで、俺は自分に嘘をつこう。彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますように……。

高三の夏をやり直すタイムリープものであるが、SF的な要素は無くとにかくひたすら青春一直線な作品。
最愛の彼女・燐の死と、彼女が死ぬ間際に自分の言った言葉への後悔で立ち止まってしまった主人公・智に、不意に訪れた二度めの夏。“一度め”の告白の何がいけなかったのか気付かぬまま、自分から溢れだす想いを封じ込めるしかない智の目線で物語は語られる。
想いを寄せる燐の笑顔を守るために自分を押し殺し続ける切なさ、間違ってはいなくとも決して正解ではない方法を取るしないもどかしさ、不自然な態度からおかしくなっていく関係をギリギリのところで繋ぎ止める危なっかしさ。そのどれもにヤキモキするけれど、それら全てがどうしようもなく青春だった。
智は最後の最後まで本当に不器用で、このままお互い想いが伝わらないまま終わってしまうんじゃないかと、ハラハラしたが、最後は彼女が締めてくれる。
燐の残した言葉、智の背中の押す言葉の伝え方に、彼女の想いの強さと優しさが詰まっていて涙腺を刺激される。その言葉に押されて前を向いて歩きだす彼の姿にも。
別れが分かっているから自分の想いを言葉に出来ない切なさと、言葉にしなくても伝わる想いもあることの嬉しさの両方がある、悲しくも優しい物語だった。
とても『下ネタ〜』の作者が書いたとは思えない(失礼)、良作青春ストーリー。