いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「異人館画廊 贋作師とまぼろしの絵」谷瑞恵(オレンジ文庫)

異人館画廊 贋作師とまぼろしの絵 (集英社オレンジ文庫)
異人館画廊 贋作師とまぼろしの絵 (集英社オレンジ文庫)

英国で図像学を学んだ千景は祖母の営む『異人館画廊』で暮らしている。ブロンズィーノの贋作の噂を聞いた千景と幼馴染の透磨は高級画廊プラチナ・ミューズの展覧会に潜入するが怪しい絵は見つからなかった。
が、ある収集家が所持していた呪いの絵画が、展覧会で見た絵とタッチが似ていることに気づく。しかも鑑定を依頼してきたのが透磨の元恋人らしいと知って!?
真実は絵の中に。呪いの絵画をめぐる美術ミステリー!

図像学という珍しい学問を修得している千景と、幼馴染みの画廊の店主・透磨を中心にした美術ミステリ、待望の第二弾。



前回の事件を受けて千景と透磨の仲も少しは進展し……てないな。むしろ千景がもっと頑なになっていた。
どうして?と思いつつ読み進めると、千景の過去が明らかになればなるほど彼女の闇の深さを知ることに。1巻で語られた内容はまだまだ触りだったのか。これならあのツンケンした態度も納得、出来てしまうのが悲しい。
それなのに、頼みの透磨は生来の皮肉屋が災いして二人は喧嘩ばかり。それでいて、千景は感情を否定しながら、透磨は割とストレートにお互いを最も大切だと認識しているっていうのがね。これがもう少し平和な話だったらニヤニヤ出来る要素なんだろうけど、この二人の仲違いが終盤をハラハラさせてくれる一番のスパイスだから性質が悪い(いい意味で、と言っていいのか?
事件の方は、贋作を巡ってこじれるお金と愛憎の話。複雑に絡まる人間関係に、千景たちキューブのメンバーも絡んでいく後半、加速度的に緊張感が増していく展開に目が離せない。いや、最後まで危なっかしい行動を繰り返す千景が目を離させてくれない、と言うべきか。
あちこちでハラハラさせてくれるスリリングな話で面白かった。透磨の鼻っ柱がちょっと折られて千景の態度がちょっと軟化したラストの読後感も抜群。