いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ショコラの王子様」秋目人(メディアワークス文庫)

ショコラの王子様 (メディアワークス文庫)
ショコラの王子様 (メディアワークス文庫)

仙台駅から列車に揺られて十数分ほどの北岡駅。この無人駅の駅舎内には、ひっそりとショコラ専門店が開いている。店名は「カカオ・クリオロ」。味も見た目も絶品のショコラが売られているのに、なぜか、お客がぜんぜん寄りついていない。
ある日、まったくの偶然で、カカオ・クリオロに足を踏み入れてしまった女子高生・翠は、店に客が入らない理由を知ることになる。
この店のショコラティエはイケメンなのに、とんでもない秘密をもっていたのだ……。


寂れた無人駅でひっそりと営業するショコラ専門店の物語。
チョコレートの専門店を題材にした話らしくチョコレートは種類も数もいっぱい出てきて、ちょっとした薀蓄要素があって面白い。但し、チョコレートの味に関する描写はそこまで濃くはないので、食欲がそそられる食べ物小説の側面は薄め。でもまあ、あの娘の前ではチョコレートも舞台装置の一つにすぎないな。
この作品の肝はお店の客である女子高生の主人公・翠の存在。
元気ハツラツという言葉が本当に似合うキャラクターで、店の人達を時には振り回し、時にはぐいぐいと引っ張っいく姿がとにかくパワフル。彼女の行動を読んでいるだけで、元気を分けて貰えたような気分になる。
そんな彼女と店長の征一との過去が見え始めてくると、話が湿っぽくなる時期もあるけど、そこは翠さん。最後もスカッとしてホッとする行動で和ませてくれる。
しかし、チョコレートの話で王子様に会えた話でもあるのにちっとも甘く感じなかったなあ。まあ心はぽかぽかだからいいか。


天使(翠曰く)な知花ちゃんや、多くの動物たちなど、視覚に訴える愛玩系の登場人物/動物が多かったので、挿絵がつく電撃文庫で出した方が良かった気がする。ラノベレーベルで出すには話がちょっと地味だが。