いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「コートボニー教授の永続魔石」桜山うす(オーバーラップ文庫)

コートボニー教授の永続魔石 (オーバーラップ文庫)
コートボニー教授の永続魔石 (オーバーラップ文庫)

「よろしい。さっそく設計してみせるのだ、スービ・キュージット」
冒険に欠かせないアイテム収納ボックス、全方位カメラ、空を飛ぶ船……これらの発明をたった1人で成し遂げる男がいたとしたら?
――彼こそスービ・キュージット。大学10年生、憲兵局の法改正を強いた回数4回、異常なネコミミ偏愛者にして、魔法学界の奇跡。
そんな彼はある日、100年先の技術を持つコートボニー教授と出会う。スービは魔力の永久機関といわれる“永続魔石"を彼女と共に探すことになるのだが――。
第1回オーバーラップ文庫大賞“金賞"受賞作、ついに登場!


良くも悪くもごちゃごちゃしている。
所狭しと雑多に立ち並ぶ家々と狭い路地裏。ファンタジーなのにそんな下町情緒を感じさせるのごちゃごちゃっとした空気が出ていて、作品の雰囲気はかなり好み。
反面、発明も多種族の交流も探索も冒険もと、何でもかんでも詰め込んでしまった為に、ストーリーは無いに等しい。一応、主人公が魔工機職人という事で発明がメインらしいのだが、脱線に次ぐ脱線で(色々な意味で)冒険しているところの方が多いし、発明がメインになるところも、発明をしているより自分の発明品に振り回されているところの方が多い様な……。
世界観や設定も複雑怪奇。がっちりした説明分を作らずに、話を進めながら分からせていくスタイルには好感が持てるのだけど、終盤になっても新要素が次々と出てくるので、どんな世界なのか段々分からなくなっていく。またゲームの要素も多分に組み込まれているのもカオスになっている要因。DQやFF等のJRPGはもちろんMH、アイマスともはや何でも有り。
結局、何をテーマに書きたかったのか。主人公は何をしたかったのか。タイトルはこれで良かったのか(表紙&タイトルの教授は序盤以降ほとんど出番なし)。疑問がいっぱい残る話になった。
初めのうちは雰囲気が良くて結構楽しんでいたのだけど、話が進むにつれて何が何だか分からなくなって最後は読むのがしんどかった。詰め込み過ぎが極まった、ある意味非常に新人賞らしい作品。それでも作品の雰囲気にセンス感じさせてくれるので、最近では珍しい完成度タイプではなく原石タイプの受賞作品と言えるだろう。