――ボクは、絶対に生きのびる。
透き通る蒼い海と、紺碧の空。世界の全てを二つの青が覆う時代、「アフター」。
セイラー服を着た14歳の少女アキは、両親の形見・愛船パラス号で大海を渡り荷物を届ける『メッセンジャー』として暮らしていた。ある日、オウムガエルのキーちゃん船長を携えたアキは、航行中に恐るべき『白い嵐』に遭遇、船を失って浮島に取り残されてしまう。そこは、見渡す限り青い海が広がる孤立無援の島だった……。
アキとキーちゃん船長の、『生きるための戦い』が始まる。
第21回電撃小説大賞大賞受賞作。
おお！ 電撃の大賞なのに面白い！（←失礼
『エスケヱプ・スピヰド』は後半型だったし、１巻でここまで面白い大賞作は『アクセル・ワールド』以来かも。大賞以外ならいくつも名前が挙がるんだけどね、変な話。
陸地が全て海の底に沈んだ未来の地球を舞台にした海洋冒険活劇。少年よりも少年らしい少女・アキを主人公にした
「生きること」をテーマにした物語。
主人公が女の子だし、そこまでハードなことにはならないんでしょ？なんて思っていたら、のっけからいきなり頭をガツンとやられた。ここまでリアルに「死」を描くとは。『生きるための戦い』ってこういうことか。
その後、同じ浮島近くに流されてきた大人びた少女・タカとの出会いから冒険らしい冒険がスタート。
少年のような心の持ち主だからこそ感じられる海の冒険のワクワク感があれば、女の子同士のだからこそできる友情の育み方とスキンシップもある。これはいい主人公だ。素直な性格で感情が剥きだしな分、感情移入しやすいのも良い。
そして物語は育んだ友情と「生きること」を試される展開へ……。
アキとタカの奮闘は、自分の価値に悩みながらも「生きること」とそれ以上に「相手を生かすこと」に貪欲な二人の少女の力強さがひしひしと感じられた。それだけに、エピローグ前の急展開があまりに駆け足でご都合主義に感じるのが少々残念。
ライトノベルらしからぬ「死」の近さで、「生きる」というダイレクトなメッセージを強く伝える良作。
４月に早くも二巻がでるのか。楽しみだ。
